| [はじめに]
今年度は,「大学入学共通テスト」と名称が変わってから6年目となる。また,新課程に移行して2年目である。例年,この時期は雪が降ったりしてとても寒かった印象が強いのだが,今年度はかなり暖かく,地球温暖化の影響(?)を実感した2日間であった。
今年度の「物理基礎」は,解いてみて,こんなに簡単だったのか? という第一印象を持った一方,「物理」のほうは,これは二次試験レベルなのではないか? と思ったくらいの難度の高い問題がちらほら含まれていた。「大学入学共通テスト」と名称が変わってから感じ続けてきたことなのだが,以前の「大学入試センター試験」のような基礎基本の学力を測るような出題から,何問かは二次試験レベルの問題も含まれるようになってきており,難易度が上がっているなぁということである。少なくとも,僕が解いた感覚で申し訳ないが,昨年度よりも難易度は大きく跳ね上がったといえるだろう。もはや,「大学入学共通テスト」は,日々の高校の授業,演習,定期テストで十分満点がとれるレベルの学力では,満点をとるのは厳しい時代になってきたのかもしれない……。
[全体講評]
ざっと解いてみての第一印象は,これは二次試験レベルなのではないか? と思ったくらいの難度の高い問題が何問かあったのに驚いた。これまで見たことのないシチュエーションの問題も含まれており,全体的にやや難しい印象を受けた。「大学入学共通テスト」になって目指すと謳われていた,“知識の理解の質を問う問題”,そして“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”を出題しようとした結果として,難しくなってしまったのかもしれないが……。
たとえば,小問集合の第1問ではあるものの,問2では,電子ブロックのような装置をつかって交流についての理解度を問う比較的難易度の高い問題が出題されたし,問3では,風船の動きで運動を考察するという見かけたことのない出題がなされていた。第2問の問3以降では,衝突する物体がばねにつながれた場合という,二次試験レベルのかなり難易度の高い問題が出題されていた。第4問は,電磁気学の総合問題となっており,もしかしたら,私立大学の二次試験よりも難易度が高い問題なのではないかと思うくらい,本格的な問題となっていた。特に最後の問5では,短い試験時間のなかで,ここまで問われるのかと思うくらいの丁寧な計算が必要であり,受験生にとっては,非常につらかった難問だったのではないかと思った。
こうやって再度全問題を俯瞰してみるに,“知識の理解の質を問う問題”,そして“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”にあたる問題は第1問くらいであり,第2問からは,二次試験レベルの難易度の高い問題をひたすら解いたという感想しか持てなかったといえる。「大学入試センター試験」とはまったく出題レベルが異なるというのが正直な感想だ。
全問題を通して,昨年度と同じく,部分点を与える問題は1題もなかった。
また,「大学入試共通テスト」になって登場するようになった数値計算の結果を,「□.□×10^□」の解答形式で解答させるような問題は,出題されなかった。これは,物理基礎でも同様であった。これで3年間連続である。このまま,この解答形式は消えてしまうのであろうか? 次年度が見ものである。
出題範囲としては,ここ数年と同様に,力学から原子物理学までの全分野からまんべんなく出題されていた。高校現場では原子物理学までしっかり終了するのがなかなか厳しいのが現状ではあるが,第1問の小問集合の中でありながら,問4ではコンプトン効果がガッツリ出題されており,教科書の最後までしっかり学習しないと点は与えないぞという出題者の心意気を感じた。
[各設問に対するコメント&説明]
第1問
小問集合。ただし,小問の形式をとりながらも,易しい問題が並んでいるわけではない。問1から順に,ドップラー効果の標準問題,交流におけるRLC回路,慣性力に関する問題,コンプトン効果,熱力学の問題。順番が前後するものの,力学から熱力学,波動分野,電磁気学,原子物理学まで,まんべんなく幅広い分野からの出題であった。特筆すべきは,問2の交流のRLC直列回路の問題。受験生が苦手とする交流回路が,学研の電子ブロックのようなシチュエーションで出題されており,やや難しいと感じた。また,問3では,慣性力によって風船がどう傾くかというこれまで見たことのない実験結果を使った,深く考える必要のある問題が出題されていた。やや難しいのだが,良問ともいえるかもしれない。
問1)ドップラー効果の標準問題として,どこかで見たことがあるような問題であった。数値計算であるため,しょっぱなから,難儀だなと思わされ,出鼻を少し挫かされた。720[m]離れた点Aでサイレンを鳴らし始めると,サイレンは音速 340[m/s]で進むので,点Oの観測者のところまでは,t = x/V = 720/340 = 2.117… ≒ 2.1[s](←ア)後にサイレンの音が聞こえる。その振動数の高い方 f′は,音源の救急車と,観測者のそれぞれで,波の基本式を立てて連立して求める。
救急車 : V − vS = fλ 340−20=960λ
観測者 : V = f′λ 340=f′λ
これらを連立して,音の波長λを消去すると,f′= [340/(340−20)]×900 = 1020[Hz](←イ)。Dが正解。救急車が近づいてくるときは,サイレンの音の高さは高くなって聞こえることがわかる。【普通】
問2)学研の電子ブロックを彷彿とさせるシチュエーションである。え? 電子ブロックを知らない? う〜む,世代ギャップかな。20年くらい前に学研の“大人の科学”で電子ブロックは一度復刻されているのだが……。さて,この問題では,前半では直流回路の過渡現象が,後半では受験生の苦手とする交流回路における抵抗,コイル,コンデンサーのそれぞれのふるまいを問うたやや難易度が高い問題である。
まず,ホルダー1,ホルダー2に回路素子をはめて“しばらくたったとき”ランプが最も明るくつく回路素子の組み合わせから考える。直流回路の過渡現象として,直流では十分時間が経つと,コイルはあたかも導線(抵抗が0)のように,コンデンサーは切れた導線(電流が流れない)のようにふるまうため,コンデンサーを含まない組み合わせでなければランプは光らない。また,抵抗器より導線の方が電気抵抗が少ないことも考慮すると,ランプが最も明るくつく回路素子の組み合わせは,導線とコイルとわかる。[ 2 ]は@が正解。過渡現象が問われるのはやや難易度が高いと感じた。【普通〜やや難】
次に,交流電源に変えた場合を考える。交流回路のRLC直列つなぎにおける合成インピーダンスが,Z = √[R^2 +(ωL−1/ωC)^2]であったことを思い出そう。Z が最小になる組み合わせは,コイルとコンデンサーをはめた時である。今回はそれぞれのリアクタンス(交流回路における電気抵抗のようなものと思えばよい)がすべて抵抗の抵抗値 R と同じになっているとのことなので,Z = √(ωL−1/ωC)^2 = ωL−1/ωC = R − R = 0 となり,Z は 0 となるので最小となる。それ以外の組み合わせでは 0 にならない。 3 はCが正解。【やや難】
問3)慣性力によって風船がどう傾くかというこれまで見たことのない実験であった。二酸化炭素とヘリウムでは二酸化炭素の方が重い。図4のように一定の加速度で速さを増しているときの風船の傾き具合(図5)から,二酸化炭素入りの風船(下)に慣性力 ma が進行方向と逆向き(向かって左向き)にはたらいたために,手の位置を軸にして糸が傾いたということがわかる。ヘリウム入りに風船にも同じ向かって左向きに慣性力がはたらくが,質量が二酸化炭素に比べると非常に小さいために慣性力の大きさも非常に小さいので,二酸化炭素入りの風船だけにはたらく慣性力で糸の傾きが決まると考えればよいだろう。図6のように一定の半径の左カーブを一定の速さで進んでいる,つまり,等速円運動をしている場合は,風船には遠心力という名前の慣性力がはたらく。その効果が大きい二酸化炭素入りの風船(下の風船)は,図7のカメラから見れば向かって右側に慣性力を受ける。糸でつながった上のヘリウム入りの風船は左側へ動く。つまり,糸はAのようになることがわかる。Aが正解。慣性力によって現象を解明するという,物理現象を考察する良問かと思う。【やや易〜普通】
問4)コンプトン効果の問題。現役高校生だと,学習したばかりの分野かもしれないということでの配慮なのか(?),コンプトン効果の丁寧な説明から,衝突前後の運動量保存の法則の式までも問題文中に書いてあるという親切設計であった。まず,衝突前後でエネルギー保存の法則が成り立つということに従い,式を立てると,
エネルギー保存の法則 : hc/λ + 0 = hc/λ′+ 1/2・mv^2
となる。λとλ′の大きさを比較するために変形すると,hc/λ − hc/λ′= 1/2・mv^2 > 0 となるから,hc/λ > hc/λ′つまり,λ<λ′。散乱X線の波長λ′は,入射X線の波長λより大きい(←ウ)。
衝突後にX線が θ=90°の向きに散乱されたとき,運動量保存の法則の式は,
x方向 : h/λ = (h/λ′)・cos90°+ mv cosφ = 0 + mv cosφ …… @
y方向 : 0 = (h/h′)・sin90°−mv sinφ = h/λ′− mv sinφ …… A
@より,h/λ = mv cosφ …… @′
Aより,h/λ′= mv sinφ …… A′
A′/@′ ⇒ [h/λ′= mv sinφ]/[h/λ′= mv sinφ] ⇒ λ/λ′= sinφ/conφ = tanφ となる。
ここで,λ ≒ λ′とするのだから,tanφ ≒ λ/λ = 1 となり,φ=45°となる(←エ)。
以上により,Aが正解。角度を求めるときに tan にするのは,物理ではよくあることであるから,問題演習をして慣れていれば珍しくないだろう。計算もさほど面倒ではない。【普通〜やや難】
問5)熱力学の問題。受験生がやや苦手とすると予想される気体分子運動論の分野と絡めた問題であった。同じ種類の単原子分子からなる理想気体(A,Bとする)があり,同じ体積(Vとする),同じ圧力(pとする)であるが,温度が異なる(TA,TBとする)。それぞれの気体で状態方程式を書くと,
A : pV=nA・R・TA
B : pV=nB・R・TB
となる。pVの積は一定になるが,温度が異なる(TA≠TB)ことより,物質量も異なる(nA≠nB)ことがわかる。
(a) 内部エネルギーは,U = 3/2・nRT とかけるのであったから,Aの内部エネルギーは UA = 3/2・nA・R・TA = 3/2・pV,Bは UB = 3/2・n・bR・TB = 3/2・pV となる。つまり,UA = UB となる。内部エネルギーは二つの容器内の気体で等しい。
(b) 分子1個あたりの平均運動エネルギーは,1/2・m・<v^2> = 3/2・k・T とかけるので,Aの分子1個あたりの平均運動エネルギーは 3/2・k・TA であり,Bは 3/2・k・TB である。温度が異なる(TA≠TB)ことより,分子1個あたりの平均運動エネルギーも異なる。k はボルツマン定数である。
(c) 分子の二乗平均速度(根平均二乗速度)とは,√<v^2> のことであるから,(b)の分子1個あたりの平均運動エネルギー関係式を変形すると,√<v^2> = √(3/m・k・T) とかける。分子の二乗平均速度と物質量 n との積は,Aが √<vA^2>×nA = √[(3/m・k・TA)×nA] = √[(3k/m)・nA・nA・TA] = √[(3k/mR)・pV・nA]となり,Bが √<vB^2>×nB = √[(3/m・k・TB)×nB] = √[(3k/m)・nB・nB・TB] = √[(3k/mR)・pV・nB]となる。物質量が異なる(nA≠nB)から,分子の二乗平均速度と物質量 n との積は異なる。
以上により,@の(a)内部エネルギーのみ二つの容器内の気体で等しくなることがわかる。@が正解。説明のためにまともに計算してみたら結構大変だった(汗)。【やや難】
第2問
物体の衝突の問題。問1で固定された壁との衝突,問2で静止している物体への衝突,問3以降はばねでつながれた2物体への衝突の問題と,だんだん難しくなっていく問題構成であった。とくに問3以降の問題は,もはや二次試験レベルで,どのように考えればよいかが問題文中に示されてはいるものの,かなり難易度の高い問題だと感じた。
問1)固定された壁との衝突の問題。衝突後のAの速さを v とすると,反発係数は,e = v/v0 < 1 とかけることから,v = ev0 である(v < v0)。よって,小物体Aが衝突で失った力学エネルギーは,ΔEA = 1/2・mv0^2 − 1/2・mv^2 = 1/2・mv0^2 − 1/2・m(e・v0)^2 = 1/2・mv0^2・(1−e^2) となる。Cが正解。【やや易】
問2)静止している物体への衝突の問題。運動量保存則と反発係数の式を連立させて解く,教科書例題レベルの問題。しかも,弾性衝突(e=1)の場合である。2物体の衝突前後で,
運動慮保存則より
衝突前 衝突後
m・v0 + M・0 = m・v + M・V1 …… B
弾性衝突なので反発係数はe=1となる
e = (V1−v)/(v0−0) = 1 …… C
Cより,V1−v = v0 …… C′
B−M×C′をすると,
(m−M)×v0 =(m+M)×v
v= [(m−M)/(m+M)]×v0 (←[ 8 ]はBが正解)
B+m×C′をすると,
2m・v0 =(m+M)V1 V1= [2m/(m+M)]・v0 (←[ 9 ]はAが正解)
弾性衝突の場合なので,計算は易しい。【普通】
問3)軽いばねでつながれた2物体に,小物体Aを衝突させるという問題。もはやこのレベルになると,二次試験レベルの中でもやや難しい問題に相当する。「大学入学共通テスト」で,ここまで難易度の高い問題が出題されるのかと驚かされる。とはいえ,ノーヒントではなく,考え方や現象の扱い方をていねいに誘導してくれてはいるので,初めてこのような難易度の高い問題に取り組むことになってしまった受験生にも一定の配慮は感じられた。誘導に従って考えていこう。まずは,ばねでつながれたB1とB2を一体の物体Bとして考える。AとBの間の反発係数は,e= (V−v)/(v0−0) = (V-v)/v0 (←アは(c)が正解)である。次に,この値が1なのか,1より小さいかを求めていこう。誘導文中にある“Bの運動量をBの質量 2M で割った量をBの速度とする”にしたがって,図3の衝突直後で,Bの速度 V を求めてみる。
V = (B1の運動量+B2の運動量)/2M = (M・V1+M・0)/2M = V1/2 この結果を反発係数の式に代入すると,
e = (V−v)/v0 = [(V1/2)−v]/v0 = [(1/2・V1) − v]/v0
となる。ここで,図3の“衝突直後”の状態では,Aの衝突したB1の物体は問2の2物体衝突と同じ速さになると考えればよいということに気が付くので,問2の結果を代入してみると,
e = [1/2・(2m/(m+M)・v0 ー (m−M)/(m+M)・v0]/v0 = (m−m+M)/(m+M) = M/(m+M) < 1
と反発係数が 1 より小さいことがわかる(←イは(f)が正解)。
以上により,Eが正解となる。後半の反発係数が 1 なのか,1 より小さいかを判別する式展開をどのようにしていくのかについて,問2を使うという明確な誘導がないので,それに気が付けなかった場合は勘で選ぶしかなかったのではないかと考えられる。【難】
問4)衝突後に,B1とばねとB2は,ばねが伸び縮みしながら,一直線上を動いていくのだが,その状態を力学的エネルギー保存則と運動量保存則を使って考えていくという,これまた二次試験レベルの難度の高い問題である。誘導に従って順番に考えていこう。まず,衝突直後のBの力学的エネルギーを求めよとのことだ。Bの力学的エネルギーとは,衝突直後のB1とB2の力学的エネルギーの和なので,1/2・M・V1^2 + 1/2・M・0^2 = 1/2・M・V1^2 = 1/2・M×(2V)^2 = 2MV^2 と表される(←ウは(c)が正解)。次に,衝突後にばねの自然長からの伸びが最大となるときを考える。ばねの伸びが最大になるときは,“B1とB2の速度が等しい“という誘導がヒントとなっている。問3に“Aとの衝突後には,……,Bの運動量は保存する”とあるので,衝突直後とばねの伸びが最大になるとき(B1とB2の速度がV′で等しいとする)で,運動量保存則の式と,力学的エネルギー保存則の式を立てよう。
運動量保存則
MV1 + M・0 = MV′+ MV′
これより,MV1 = 2MV′ とわかる。
力学的エネルギー保存則
1/2・M・V1^2 + 1/2・M・0^2 = 1/2・M・V′^2 + 1/2・M・V′^2 + 1/2・k・x^2
整理すると,
1/2・M・V1^2 = 2 × 1/2・M・V′^2 + 1/2・k・x^2
M(2V)^2 = 2×M・V2 + k・x^2
4×M・V^2 − 2×M・V^2 = k・x^2
k・x^2 = 2×M・V^2
よって,ばねの伸びの最大値は,x = √(2M/k)・V (←エは(e)が正解)。
以上より,Eが正解とわかる。【難】
第3問
昨年同様,AとBに分かれていた。Aは p−V 図からいろいろ読み取る熱力学のよくある問題。問3は気体の熱量変化が各過程において,吸熱なのか放熱なのかを間違わないように注意したい。Bは平面波の重ね合わせの問題。問5で円形波と平面波の波の強め合う条件を満たす点の数を求める問題が出たのだが,これを僕は,式展開の結果を使って個数を数えようとしたのだが,かなり厄介な式展開になってしまった(←絶対値を外すのに苦労した)。もしかしたら,もっとうまい解き方があるのかもしれない……。
A
問1)単原子分子理想気体が入っているとのことなので,ABCの各状態で状態方程式が成り立つので,まずは,それぞれの状態で状態方程式を立てておく。
A : 10p0・V0 = n・R・TA
B : 10p0×10V0 = n・R・TB
C : p0×10V0 = n・R・TC
A→Bの過程は,定圧変化であるため,熱力学第1法則により,吸収熱量は,
ΔQ = ΔU + W = 3/2・pΔV + pΔV = 5/2・pΔV = 5/2×10p0×(10V0−V0) = 225p0V0
となる。Aが正解。ちなみに,A→Bの変化では,体積が大きくなっていることからもわかるように,気体は外に仕事をしている。【普通】
問2)p−V 図において,1サイクルで気体が外部にした仕事は,p−V 曲線で囲まれた部分の面積分である。この問題では,その面積を方眼紙のマス目の面積から近似的に求めるという,相当アナログな(?)方法である。地道にマス目(1マスの面積が p0V0)の数を数えるしかない。(a)の灰色のマス目数は58マスなので,W(a)=58 p0V0 。(b)の灰色のマス目数は73マスなので,W(b)=73 p0V0 。これらの総和の平均値を気体が外部にする仕事の総和 W と近似するのだから,W = [W(a)+W(b])/2 = (58p0V0 + 73p0V0)/2 = 131/2×p0V0 となる。Cが正解。【易】
問3)1サイクルでの熱量の変化と,熱効率を求める問題。各過程において吸熱するのか放熱するのかを間違えないようにしたい。
A→B(定圧変化):問1でやったように吸収熱量としてQ(吸熱)
B→C(定積変化):熱力学第1法則より,ΔQ=ΔU=3/2・n・R(TA−TB) < 0 (放熱)
問1で立てた状態方程式より TA = 10TB であることから放熱とわかる
放出した熱量をQB→Cとしておく
C→A(等温変化):熱力学第1法則より,ΔQ = W < 0(放熱)
体積が小さくなっているので外から仕事をされていることがわかる
放出した熱量を QC→A としておく
1サイクルで,熱力学第1法則の式を立てると,Q +(−QB→C)+(−QC→A)= 0 + W となるから,B→C→Aで気体が放出する熱量は,QB→C+QC→A=Q−W(←ア)と表される。この熱機関の熱効率は,e = 外へした仕事/吸収した熱量 = W/Q(←イ)である。以上によりBが正解。【普通】
B
問4)座標(X,Y)の点Pにおいて,円形波と平面波が強め合う条件は,波源が同じ位相で振動していることより径路差が波長の整数倍になればよい。円形波源OからPまでの経路OPは,OP=√(X^2+Y^2)。平面波源LからPまでの経路 LP は,平面波であることに注意すれば,Pから面Lまで垂直におろした垂線の長さとなる。LP = L−X。よって,その経路差が整数になる条件は,| (L−X)−√(X^2+Y^2) | = mλ である。Bが正解。【やや易】
問5)L が 11λ の場合に,0.2λ< x < 10.8λ の区間で強め合う条件をみたす点の数を問われた問題である。このように波形の図が出題され,図から強め合う条件の位置を具体的に探すという問題は,この手の問題ではよく見かけるのであるが,図をしっかり描いて求める方が速い場合と,数式展開をして求める方が速い場合がある。今回は円形波と平面波というちょっと複雑な組み合わせであるのと同時に,多くの強め合う点がありそうだと感じたので,数式展開をして,強め合う条件を満たす点の数を求めようと考えた。ただ,問4の絶対値を含む条件式の絶対値をとる必要があり,思っていた以上に数式展開に工夫が必要になってしまった。不等式の絶対値をとる方法として,2乗する,場合分けをするなどが考えられるが,ここでは,整数 m(m=0,1,2,3,…)のところをマイナスの整数も含む m′(m′=…,−3,−2,−1,0,1,2,3,…)とすることで絶対値をはずすことにした。
| (L−X)−√(X^2+Y^2) | = mλ (m=0,1,2,3,…)
↓ x軸上の区間であることより,Y=0。m→m′として絶対値をはずすと,
(L−X)−√(X^2+0^2) = m′λ
L−X−X = m′λ
L−2X = m′λ (m′=…,−3,−2,−1,0,1,2,3,…)
となる。L が 11λ の場合なので,
11λ−2X = m′λ
2X = (11−m′)λ
X = [(11ーm′)/2]・λ
つまり,0.2λ< x < 10.8λ の区間で強め合う条件は,0.2λ> [(11ーm′)/2]・λ < 10.8λ をみたす m′がいくつあるかを探せばよいわけだ。波の波長 λ は正なので,両辺を λ で割ると,
0.2 < (11ーm′)/2 < 10.8
両辺に −2 をかけて,(負の値をかけるので不等号の向きが逆になる)
−0.4 > m′−11 > −21.6
−10.6 < m′< 10.6
これをみたすm′は,次の21個。
−10,−9,−8,−7,−6,−5,−4,−3,−2,−1,0, 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10
もっとうまい考え方があるかもしれないが,僕はこの方法で正解にたどりついた。Cが正解。【難】
問6)問5とは打って変わって,問6では,二次元の波の重ね合わせを考える問題となっている。ただ,点Qの強め合っている山の頂点がどう移動するかだけが問われているので,図にかかれている山の波面を少しだけあとの位置に,自分で山の波面をかくことで,たちまち正解にたどりつけるだろう。具体的には,円形波はより外側に広がり,平面波は左へと進む。すると,ちょうど1周期後に,点Qの交点は,イの位置に移動することがわかる。Aが正解。【易】
第4問
装置1は一様電場中に飛び込んだ荷電粒子の運動,その後に,装置2の一様磁場中に飛び込んだ荷電粒子の運動と,電磁気学の総合問題として,電場と磁場を組み合わせた,私立大学の二次試験なみの,なかなかに難度が高い問題であった。特に最後の問5は,装置全体で荷電粒子の軌道がどう変わるかのをていねいに求めていく必要があり,短い試験時間のなかでここまで問うのかと思ったほどの難問だった。
問1)一様電場中に飛び込んだ荷電粒子の運動についての問題である。図2は,この装置が平行版コンデンサそのものであることに気が付けば,コンデンサに直流電源がつながっているだけなので,装置1ではコンデンサは充電された状態になっているわけだ。つまり,極板間の電圧の大きさは,コンデンサの内部の一様電場Eを用いて,V = Ed とかける(←ア)。また,荷電粒子の電気量が負であることから,一様電場中で図2の下向きに静電気力(クーロン力)を受けるためには,電場の向きは上向きでなくてはならない。つまり極板Aに比べて極板Bの方が電位が高いことがわかる(←イ)。以上により,Bが正解。【やや易】
問2)荷電粒子が極板間に入射してから飛び出すまでに,静電気力が荷電粒子にした仕事を求める問題。仕事とあるので,力学的エネルギーの変化を考えよう。45°で入射し,45°で出ていくという図2を見ていると,なんだか斜方投射を思い出さないだろうか? この問題は,その場合と同じように考えればよく,45°で入射するときの速さが v0 であれば,45°で出ていくときの速さも v0 となるのであった(水平方向と鉛直方向に速度を分解して考えれば,水平方向は等速直線運動,鉛直方向は鉛直投げ上げ運動となるから,鉛直投げ上げ運動においては同じ高さまで戻った時の速さが等しくなるという運動の対称性があったことを思い出せばよい)。つまり,入射時も飛び出す直後も同じ運動エネルギー 1/2・m・v0^2 で,位置エネルギーも同じ(同じ極板Bなので同電位だから,電気的な位置エネルギーも同じ)であるから,変化していない。つまり,一様電場からされた仕事は 0 である。Fが正解。選択肢が7つもあって,0 が正解というわけだ……。う〜む,出題者は受験生を焦らせたかったのだろうか?【やや易】
問3)極板間の電場の強さ E を求める問題である。条件として 45°で入射,45°で飛び出すということがわかっているので,その条件をみたすように電場の強さを求めろというわけだ。問2でかいたように,斜方投射とみなして,鉛直方向の運動について地道に考えていくことにしよう。
鉛直上向きを正として一様電場中の加速度を a とすると,運動方程式は,ma = −eE となる。よって,加速度は,a = −(e/m)・E。入射位置から水平方向に距離 L 進むのにかかる時間は,t = L/(v0/√2) = (√2/v0)・L である。この時間 t でちょうど鉛直方向で入射したのと同じ高さに戻ってくればいい(鉛直方向の速さが同じになればいい)ので,鉛直方向で,等加速度直線運動のところで出てきた速度の公式(v=v0+at)を立てると,
−v0/√2 = v0/√2 + ( −(e/m)・E )・( (√2/v0)・L )
−(2/√2)・v0 = −[(√2)・e/mv0]・EL
E = m・v0^2 / eL
Bが正解。電気分野の問題なのだが,斜方投射の問題と同じように,運動方程式を立てたり,等加速度直線運動の速度の公式を使ったりと,総合問題としてのはなかなかの良問である。ただし,受験生には難易度が高かろう。【やや難】
問4)ここからは,装置2での荷電粒子の運動について考えていくことになる。一様磁場中に荷電粒子が垂直な向きで飛び込んだ場合,図3のように等速円運動をしたとのことなので,これは,なんのひねりもなく,教科書でおなじみの現象である。“点Qにおいて荷電粒子が受ける力の向きは(等速円運動の円の中心を向く向心力であるから)図3の d(←ウ)の矢印の向きであり,荷電粒子の電気量が負であることから,磁場の向きは(フレミングの左手の法則によって)紙面に垂直で裏から表(←エ)の向きである。”よって,Gが正解。【やや易】
問5)図1の装置で,荷電粒子の質量だけを m′として,m の荷電粒子と同じ軌道を描くように装置1への入射速度の大きさだけを調節したところ,m′の荷電粒子が磁場から飛び出す位置を点R′としたとき,PR′間の長さがPRの長さの何倍になるかという,装置全体での気移動をていねいに求めて比較する必要がある,難問だ。
では,装置1にもどって,順番に考えていくことにしよう。質量 m の荷電粒子は,平行板コンデンサに v0 で入射し,水平方向に L だけ右の位置から v0 で 45°で飛び出すのであった。問3の結果を思い出すと,極板間の電場の強さは,E = (m・v0^2)/eL とかけるのであった。つまり,v0 = √(eEL/m) である。その後,荷電粒子は v0 で装置2へ垂直に入射して,一様磁場中で等速円運動をするから,その運動方程式は,m・(v0^2/r) = e・v0・B である(向心力は,磁場から受けるローレンツ力であるから,その大きさは,e・v0・Bとなる)。この運動方程式より,等速円運動の半径は,r = mv0/eB = (m/eB)×√(eEL/eB^2) となる。ここで,よくこの式を見てみよう。E と B と L とeは一定である。つまり,r = √(EL/e・B^2)・√m ∝ √m である。装置2の荷電粒子の軌道における円運動の半径rは荷電粒子の質量の平方根に比例するわけだ。同様にすると,荷電粒子の質量を m′にした場合は,“装置2に入射するまで質量 m の場合と同じ軌道を描く”ので,そのときの円運動の半径は, r′∝ √m′となるわけだ(E と B と L と e は,質量 m のときと同じ値であり一定)。よって,PR′/PR = 2r′/2r = √m′/√m となる。@が正解。荷電粒子の質量が変わることで,どんな運動の変化があるのかを順に考えていく必要があるが,質量を m′にした場合も装置2に入射するまで質量 m の場合と同じ軌道を描くように入射速度の大きさを調整するという操作をすることで,装置2の荷電粒子の軌道における円運動の半径 r は荷電粒子の質量の平方根に比例するという関係が見つけられるかが正解への道だったにちがいない。等速円運動の半径 r が装置1への入射速度の大きさ v0 によらないということも,この実験のおもしろいところでもあると思った。【難】
以上。
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