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2025年度 大学入学共通テスト「物理」 の講評&説明


2025年02月08日更新


数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2025年度 大学入学共通テスト「物理」 の講評&説明

(C) Copyright 2025 MATSUNO Seiji


[はじめに]

 今年度は,「大学入学共通テスト」と名称が変わってから5年目となる。また,新課程に移行した年であり,実施科目も大きく変更された。特に,地歴では新科目(地理総合,地理探究,歴史総合,日本史探求,世界史探求)が実施されたし,新科目「情報I」の試験も実施された。一部科目は旧課程のものとの同時実施もし,受験生への配慮も見られたものの,新旧課程での平均点が大きく異なったらしい。旧課程の科目のほうが平均点がどれも高く,平均の得点差が15点くらいになる科目もあったようだ。浪人生万歳なのだろうか?
 さて,理科であるが,ネット上では,化学が東大並みの難しさだったとか,平均点が化学基礎以外すべて昨年度より下がっただとか,化学と地学は平均が45点くらいで低かったとか,いろいろな情報があったのだが,物理基礎や物理に関する情報はほとんど見られなかった。ちょっと,残念。
 今年度の物理では,実際に実験を行うことを意識した出題として,実験結果について考察するような問題が昨年度に引き続き出題されていたし,昨年度よりも図やグラフを選択するような問題が多くなっていた。これは,「大学入学共通テスト」になって目指すとされていた新傾向の問題にあたるのであり,今後もこの傾向が続いていくのではないかと予想される。


[全体講評]

 ざっと解いてみてまず感じたのは,やや難しい問題がちらほら含まれていたということだ。第1問の問3では,僕がこれまで見たこともなかった,剛体にはたらく複数の力の合力を表す図を選ぶ問題が出題されていた。僕と同様に,受験生の多くが面食らったのではなかろうか? また,大問の第3問では,2021年以降久々にAとBに分かれていたのだが,この第3問のBでは,波の式を扱っており,波が重ね合わさったときに強め合う条件を波の式から導いて,具体的な数値で求めるという,かなり難易度の高い問題が出題されていたのに驚いた。もはや,二次試験レベルの問題のようではないか! ただ,問題文の誘導に乗れば,波の式を十分に理解できていなくても正解へたどり着けるような配慮は見られた。全問題を通して,部分点を与える問題は1題もなかった。
 また,「大学入試共通テスト」になって登場するようになった数値計算の結果を,「□.□×10^□」の解答形式で解答させるような問題は,出題されなかった。これは,物理基礎でも同様であった。このまま,この解答形式は消えてしまうのであろうか?
 出題範囲としては,昨年同様に,力学から原子物理学までの全分野からまんべんなく出題されていた。この点は昨年同様に,大いに評価したい。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に,熱力学の問題,重力と万有引力の関係,剛体にはたらく複数の力の合力,荷電粒子が電場や磁場から受けるローレンツ力,原子物理学の問題。順番が前後するものの,力学から熱力学,波動分野,電磁気学,原子物理学まで,まんべんなく幅広い分野からの出題であった。特筆すべきは,問3の剛体にはたらく複数の力の合力を図から選ぶ問題か。物理の教員になって四半世紀。僕がこれまでこの類の出題は一度も見たことがない(見たかもしれないけれど記憶にないだけかもしれないが……)ので,とにかく驚いた。今年度,大学入学共通テストで出題されたので,今後はこの類の類題が出題される率が高まるとは思うが,今年度に関して言うと,小問集合の3つ目の問題の出題位置であるから,かなりの動揺を受験生の多くは受けたのではなかろうか? また,問4は,電子が受ける力の向きによって,等速円運動になったり,水平投射(っぽく)になったりするのだが,それらの現象を正しく理解しているかを問うたなかなかの良問だったと思う。
問1)空気を理想気体とすることから,山頂とふもとでの理想気体の状態方程式を立て,連立すればよい。注射器が熱を通すので,注射器の中の絶対温度は外気と同じである。
    山頂 : P0・V = nR・T0
    ふもと: P1・(V-ΔV) = nR・T1
   連立してnとRを消去して整理すると,P0 = [P1・(V-ΔV)・T0] / (V・T1) 。④が正解。【普通】
問2)地表面の小物体にはたらく重力の大きさが万有引力にほぼ等しいということを利用する,ケプラーの法則の登場する分野で必ず扱う内容だ。ご丁寧にも,問題文中でも同様のことが書いてある,親切設計極まりない。ヒント不要だろう。
    地表面の重力の大きさ = 万有引力の大きさ  ⇒  mg = GMm / R^2
   よって,M = (g・R^2) / G(←ア)= 9.8×(6.4×10^6)^2 = 5.99…×10^24 ≒ 6×10^24 (←イ)。⑨が正解。【やや易】
問3)剛体にはたらく三つの力の合力を図から選ぶ問題。僕がこれまでこの類の出題は一度も見たことがない問題だった。剛体にはたらく力の合成方法にしたがって合成していこう。まず“平行でない2力の場合の合成は,それぞれの作用線の交点まで平行移動して作用点を合わせて,平行四辺形の法則で合成”する。この方法で,左上と右上を向いているともに 2F の大きさの2力が合成できる。すると,それら2力の合力は,O の位置から真上に 2F の大きさとなる。次に,“剛体にはたらく平行な2力の合成( F1 とF2 が逆向きに平行で大きさが異なる場合)は,合力の大きさは|F1-F2|となり,合力の向きは,F1 と F2 の大きい方と同じになり,作用点は2力の作用点間を力の大きさの逆比に外分する位置となる”ので,先に合成した O から真上に 2F の力と,P から真下に F の力を合成すると,真上向きで大きさ F の大きさの合力となり,力の大きさの逆比に外分する点である左端の位置が作用点となる。④が正解。【難】
問4)電子が磁場や電場からどの向きに力を受け,どのような運動をするかを問うた,なかなかの良問である。まず,電場と磁場の両方をかけると直進することから,電場から受ける静電気力と,磁場から受けるローレンツ力の大きさが同じになる(つりあっている)ことがわかる。次に,電場のみをかけると右下方向への軌道になるとのことから,電場の向きは図に向かって下から上向きであるとわかる(電波から受ける静電気力は領域R内では常に上から下向きに一定の大きさとなる)。つまり,電子ははじめの進行方向の速さはそのままで,上から下向きに静電気力を受けて,下向きに加速することになる。それは,あたかも水平投射のような運動となる。つまり,v2 > v1 。一方,磁場のみをかけるとどんな運動になるかというと,一様磁場中の荷電粒子の運動といえば,磁場から受けるローレンツ力を向心力とする等速円運動となる。つまり,領域Rに入射した速さ v3 のまま等速円運動をして,速さ v3 のまま向きだけ円運動の接線方向に変わって領域から飛び出す。つまり,v3 = v1 。よって,②の v2 > v3 =v1 が正解。【普通】
問5)原子物理学の分野から,ド・ブロイ波長とブラッグ条件の問題が出題された。ド・ブロイ波長は,(b)の h / mv(←ウ)である。単なる知識問題。図4において,電子線が強め合う条件(ブラッグ条件)は,2d sinθ = nλ = n( h/mv) となる。この条件を満たす最小のθ0 は,n = 1 のとき。よって,2d sinθ0 = h/mv である。このときの結晶面の間隔は,(c) の d = h /(2mv sinθ0)(←エ)。⑤が正解。【やや易】

第2問
  振り子の周期を精度よく測定する探究活動という題材で,まずは単振り子に関する理解度を問い,問4では,レーザーと光センサーを用いた実験の結果を考察するという,実験を意識した出題であった。また,問5では,重力加速度の測定実験ということに絡めて,地球の自転と重力加速度の大きさとの関係を,遠心力を用いて説明するという出題となっており,出題に工夫が見られた。
問1)教科書の単振動の分野で必ず登場する,単振り子の運動が単振動とみなせるという,教科書の本文で扱う内容である。図1において,重力を分解して,原点Oの向きの成分を求めると,mg sinθ である。ここで,sinθ ≒ θ の近似が成り立つ場合を考えるので,小球にはたらく単振動方向の力(←復元力にあたる)は,F = -mgθ となる。②が正解。【やや易】
問2)“小球の運動は,点Oを中心とする振幅 Lθ0 の単振動とみなすことができる”ので,“小球が点Oをx軸の負から正の向きに最初に通過する瞬間を時刻 t=0”とすると,小球は時刻が進むとまず正の向きに動くことから,s = Lθ0 × sinωt(←ア)と表せる。さて,図1において,s = L sinθ ≒ Lθ の関係があることがわかるので,問1の復元力は,F = -mgθ = -mg(s/L) = -( mg / L )・s となる。ここから,復元力定数 K は,K = mg / L となることがわかる。よって,この単振動の周期は,単振動の周期の公式から,T = 2π√(m/K) = 2π√[m/(mg/L)] = 2π√(g/L) となる(←単振り子の周期の公式として覚えている受験生多いかもしれないので導出する時間が短縮できただろう)。ここから,角振動数を求めると, (←イ)となる。角振動数という物理量を理解していれば容易。よって,①が正解。【普通】
問3)実際に目視とストップウォッチで実験をするとそれなりに実験誤差が生じるのだが,その実験誤差を扱った問題である。TN = tN / N が正確な値であるが,測定したストップウォッチの時間が tN +Δt だけ長かった場合,TN は,TN'-TN = (tN+Δt)/N - tN/N = Δt/N (←ウ)だけ大きく(←エ)見積もられる。N を変えて同じ実験をするとき,Δt が同じ値のとき,N が大きいほど,この実験誤差(Δt/N のこと)は小さく(←オ)なる。よって⑤が正解。ある物理量を変えると,どのように他の物理省が変化するのかを問う,「大学入学共通テスト」らしい(?)問題だったと思う。【やや易】
問4)次に,誤差を減らす方法として,レーザーと光センサーを組み合わせた実験装置を作り,オシロスコープの電圧の観測をしたという実験結果を考察するという問題。オシロスコープの出力の見方は,問題文中に“小球が最小点にあるとき糸がレーザー光をさえぎり,電圧が下がる”とあることから,オシロスコープの出力の図は下のピーク2つ分が振り子の1周期である。③が正解。これは,実験の結果の解釈を問うているのであるが,問題文で書いてある意味が理解できれば,それで終わりであった。……なんか,肩透かしを食らった感じだ。【易】
問5)重力加速度の大きさの測定実験というところから発展させ,赤道と極で測定される重力加速度の大きさの差について考察する問題である。問題文の誘導に乗っていけば悩むことはなかろう。“赤道上の地表面にある小球にはたらく遠心力の大きさ”は,向心力と遠心力の力のつりあいの関係により,f = ma = m×ω0^2・R(←カ)となる( a は赤道面を輪切りにして考えたときの地表面にある小球の向心加速度の大きさ)。この遠心力(←遠心方向の加速度の大きさ a = f/m )は極でははたらかないので,重力加速度の大きさの関係は,ge = gP - a = gP - f/m (←キ)となる。①が正解。【普通】

第3問
 2021年以降久々にAとBに分かれていた。Aは p-V図 や T-V図 を用いた熱力学の問題。問3では気体が外部にした仕事や気体の内部エネルギーの変化を問う,典型的な熱力学の問題であった。Bは,波の式を扱っており,かつ,波が重ね合わさったときに強め合う条件を波の式から導いて,具体的な数値で求めるという,かなり難易度の高い問題が出題されていたように感じた。ただでさえ(?)受験生の多くは,波の式というだけで苦手意識が高いのに,実験結果と絡めてかつ,重ね合わせた場合の条件まで波の式の上で問われているのである。もはや,二次試験レベルの問題のようではないか! ただ,本文の誘導に乗れば,波の式を十分に理解できていなくても正解へたどり着けるような配慮は見られた。実は,僕もそのうちの一人 ダ ッ タ リ シ マ ス ……(汗)。

問1)p-V図 で,気体が外部にした仕事は,V軸と囲まれた部分の面積分である。A→B→C の変化においては,図1から,B-C-V-2V の四角形の面積分(pV)の仕事を外部からされたことがわかる。状態Aで,理想気体の状態方程式を立てると,2p・2V = nR・TAとなるので,気体が外部にした仕事は,-pV = -(1/4)・nR・TA 。⑧が正解。【やや易】
問2)それぞれの状態での理想気体の状態方程式を立てて,温度の関係を求めることで,T-V図 が選べる。
    状態A:2p・2V = nR・TA‥‥‥ ①
    状態B:p・2V = nR・TB‥‥‥ ②
    状態C:p・V = nR・TC‥‥‥ ③
①と②より,TB = TA/2 。①と③より,TC = TA/4 。よって,②が正解。ちなみに,体積はどのグラフも同じ(AとBが 2V で,Cだけ V)になっているので考える必要はなかった。【やや易】
問3)大学入試センター試験時代から,大学入学共通テストになってもあいかわらずよく問われる,仕事の変化,内部エネルギーの変化,熱量の変化を p-V図 からよみとる頻出問題。問1でも書いたように,気体が外部にした仕事は,V軸と囲まれた部分の面積分である。過程Ⅰ(C→B→A)での気体が外部にした仕事 WⅠ は, C-B-2V-V の四角形の面積分(pV)である。過程Ⅱ(C→A)では,WⅡ は, C-A-2V-V の四角形の面積+その上の扇形っぽい部分の面積分。つまり,WⅠ<WⅡ 。次に,内部エネルギーの変化は,どちらの過程も,状態Cから状態Aへの変化であるため,同じ(ΔUⅠ=ΔUⅡ)である。これは,内部エネルギーの大きさは,状態変化の経路によらず,温度で決まるためである(←ア)。また,熱力学第一法則(ΔQ=ΔU+W)より,外部から気体に加えられた熱量は,
    過程Ⅰ:ΔQⅠ = ΔU + WⅠ
    過程Ⅱ:ΔQⅡ = ΔU + WⅡ
   WⅠ<WⅡ の関係があるので,ΔQⅠ<ΔQⅡ 。つまり,外部から気体に加えられた熱量(吸収熱量)は,過程Ⅱ(←イ)の方が大きい。以上より,⑧が正解。【普通】

問4)図4のオシロスコープの出力(?)からこの波の振動数と振幅を求める問題。オシロスコープの出力とはいうものの,縦軸と横軸には目盛りがしっかり書いてあるので,グラフから振動数と振幅をよみとるというだけの基本問題。グラフから周期が T = 0.2[s]とわかるので,振動数は,f = 1/T = 1/0.2 = 5[Hz]。また,グラフから振幅は,A = 2[cm]とすぐよみとれる。⑤が正解。【やや易】
問5)問題文が長いので要約すると,“点Pでの重ねあわされた合成波が図5のようになったということから,振動子2のみを振動した場合の点Pにおける変位を示すグラフを選べ”という問題である。①から⑧の候補のどのグラフも同じ周期であることから,振幅だけに注目すればよいということがすぐにわかる。どこでもいいのだが,たとえば,5.35[s]のときの“山”となっている部分の振幅で考えていくことにする。振動子1のみの場合(図4)は,振幅が +2.0[cm]。これが,合成されると(図5),+0.5[cm]となる。つまり,振動数2のみの場合,(+0.5)-(+2.0) = -1.5[cm]となっている必要がある。これをみたすのは②のみ。よって,②が正解。【やや易】
問6)波の式で,点Pで最も波が強め合う条件を考える問題である。yPA や yPB が波の式で表現され,かつ,点Pにおいて合成波が最も強め合う条件を数値の組み合わせで選ぶという,かなり難易度が高いと思われる問題であった。ただ,波の式において,“最も強め合う条件が f・(tPA-tPB) が整数でなければならないことがわかる”という記述があるので,波の式から強め合う条件がわからなくとも,この“f・(tPA-tPB) が整数でなければならない”条件を満たす数値の組み合わせを選べば正解にたどり着けるという最大限の配慮となっていた。f=8.0[Hz]のときなので,f・|tPA-tPB|が整数となることができるのは,|tPA-tPB|が 0.50[s]の場合しかないことがわかる(8.0×0.50=4)。なぜなら,0.20[s]だと 8.0×0.20=1.6,0.80[s]だと 8.0×0.80=6.4 なので,整数ではないからだ。この時点で,④,⑤,⑥のいずれかに絞られる。次に,距離と時間の関係から,AP = vtPA,BP = vtPB となることより,|AP-BP|=|vtPA-vtPB|=v×|tPA-tPB|= 4.0×0.50 = 2.0[m]とわかる。これより,⑤が正解。“f・(tPA-tPB) が整数でなければならない”の表現に救われた。……主に,僕自身が(苦笑)。【難】

第4問
 一様磁場中を横切る導体棒の運動についての問題であり,傍用問題集などでもよく見かける問題である。……が,前半では抵抗のほかにコンデンサがあり,後半ではコイルがあるので,回路素子のそれぞれの過渡現象が絡んでくる,やや難度の高い問題ではある。スイッチを閉じた直後にどうなるか,十分時間がたった後にどうなるかを理解していないと正解へはたどり着けない。二次試験レベルといっても過言ではないだろう……。
問1)電磁誘導に関する基本問題。導体棒に生じる誘導起電力は,ファラデーの電磁誘導の法則より,V = -N・(ΔΦ/Δt) = -N・(BΔS)/Δt で求まるので,ここで生じる誘導起電力の大きさは,V1 =|-B×vl|= vBl。次に,フレミングの左手の法則などから,電流の向きは,b→a の向きと導ける。⑥が正解。【やや易】
問2)導体棒には,磁場から受けるローレンツ力が,加える外力 F と逆向きに lIB の大きさではたらく。一定の速さ v になるには,常に,F とローレンツ力はつりあわせる(F=lIB)必要がある。回路にコンデンサがあることによって,回路を流れる電流の大きさ I が次第に小さくなるという過渡現象を理解していれば,この加える外力 F は I に比例するから,①であるとすぐに答えられる。①が正解。ただ,過渡現象による回路の電流の変化は直線的に小さくなるわけではないことを知っていなければならないが。【やや難】
問3)エネルギー保存則を考えて,回路のエネルギーについて考える問題。受験生にとっては,やや難度の高い問題であったと予想される。Sを閉じてから十分時間が経つまでにどのようにエネルギーが移り変わるかを見抜けるかを問われているのが[ 19 ]だ。エネルギー保存則を考えれば,外力がした仕事が,コンデンサーに蓄えられ,電流が回路を流れているので,そのうちの一部が抵抗でジュール熱となることがわかる。W = J + U。選択肢では,W - J - U = 0 が同じ関係である。④が正解。次に,“外力がした仕事の大きさ W は,十分な時間が経ったときにコンデンサーに蓄えられている電荷を,導体棒の両端に生じる電位差V1に逆らって運ぶ仕事の大きさに等しくなる”ことより,W = QV1 = C・V1^2である。よって,抵抗で発生したジュール熱の大きさは,J = W - U = C・V1^2 - (1/2)・C・V1^2 = (1/2)・C・V1^2 となる。つまり,[ 20 ]は,②が正解。問題文の誘導に乗れば正解が導ける親切設計ではあった。【やや難】
問4)“Sを閉じてから十分な時間が経った後に,Sを開き,導体棒を静止させた”状態では,コンデンサが(図2では下側の電極が正極となって)充電されている状態である。続いて,Sを閉じると,その瞬間はコンデンサが過渡現象により電池のようにふるまうので,導体棒には電流が a→b の向きに流れ,その電流は,磁場からフレミングの左手の法則により力を受けるので,導体棒は右向きに動き始める。⑥が正解。【普通】
問5)回路のコンデンサをコイルに変えたので,Sを閉じてから十分な時間が経ったときには,コイルの過渡現象により,コイルは導線のようにふるまうから,コイルには誘導起電力は発生していない。⑦が正解。問題文では誘導起電力が発生しているかのような記述なので,出題者に騙されないように。【普通】
問6)Sを閉じた瞬間には,コイルの過渡現象により,コイルに流れる電流は 0 である。つまり,回路に流れる電流も 0 。一定の速さvではじめから導体棒を動かしているので,加える外力Fの大きさは 0 で力がつりあう(速さは v のまま)ということになる。問2で確認したように F は I に比例するからだ。そして,十分時間が経つまでにコイルに流れる電流は直線的ではない増加の仕方をして,最終的には導線のようにふるまうので,回路に流れる電流の大きさは一定となる。導体棒の速さ v を一定を保つには,外力 F もそれに比例して必要となるので,②が正解である。コイルの過渡現象をよく理解していなければ正解へはたどり着けない。【やや難】
問7)Sを閉じた瞬間に,コイルの両端には自己誘導起電力 V2 が生じる。自己誘導起電力は,V = -L・(ΔI/Δt) なので,コイルのインダクタンス L と関係がある。図3の I-tグラフ の傾きが であるから,Sを閉じた瞬間,V2 =|-L・(ΔI/Δt)|=|-La|= La となる。よって,L = V2/a 。④が正解。図3で破線として近似するというのが傾きを考えるというヒントになって,自己誘導起電力とインダクタンスの関係式を思い出しやすった。【普通】


以上。



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