2025年度 大学入学共通テスト「物理基礎」 の講評&説明


2025年01月29日更新


数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2025年度 大学入学共通テスト「物理基礎」 の講評&説明

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[はじめに]

 今年度は,「大学入学共通テスト」と名称が変わってから5年目となる。また,新課程に移行した年であり,実施科目も大きく変更された。特に,地歴では新科目(地理総合,地理探究,歴史総合,日本史探求,世界史探求)が実施されたし,新科目「情報I」の試験も実施された。一部科目は旧課程のものとの同時実施もし,受験生への配慮も見られたものの,新旧課程での平均点が大きく異なったらしい。旧課程の科目のほうが平均点がどれも高く,平均の得点差が15点くらいになる科目もあったようだ。浪人生万歳なのだろうか?
 さて,理科であるが,ネット上では,化学が東大並みの難しさだったとか,平均点が化学基礎以外すべて昨年度より下がっただとか,化学と地学は平均が45点くらいで低かったとか,いろいろな情報があったのだが,物理基礎や物理に関する情報はほとんど見られなかった。ちょっと,残念。
 今年度の物理基礎では,昨年度復活した会話文によって実験を進めていく形式の出題はなかったし,ここのところ,実際の実験結果(っぽいもの)をもとにした出題が続いたのだが,それもわずかしかなかった。目指していたであろう「大学入学共通テスト」らしさ(?)はほとんど感じられず,結局,振り回されたのは現場だけかい! という極めて残念な印象を受けた。


[全体講評]

 まず,僕が解いてみてまずはじめに思ったことは,会話文による実験を進めていくような出題形式が昨年度復活したのに,今年度は出題されなかったということだ。また,実際の実験結果(っぽいもの)のデータを使った問題がほとんどなくなってしまい,「大学入試共通テスト」で目指そうと提唱された出題方針はどこへいってしまったのか? と思ってしまった。これは,物理基礎だけに限らず,物理にも言えることなのだが……。試験時間が短いし,場所もとるので,避けたのだろうか?
 また,昨年度は数値計算が多かったが,今年度は一昨年度のように文字式による解答を導く問題が多かった。「大学入試共通テスト」になって登場するようになった数値計算の結果を,「□.□×10□」の解答形式で解答させるような問題は,出題されなかった。もしかして,隔年出題なのですかねぇ? ……来年度がどうなるか注目したいところである。
 一番感じたのは,第2問の出題が非常に難しそうに見えると感じさらせられたということだ。見かけ倒しともいえるかもしれないが。ただでさえアトウッドの装置(←受験生は苦手)で,かつ,後半では,おもりが分裂するというから……ねぇ。おそらく,かなり面食らった受験生も多かったのではないか? 問題文中には「研究課題」でやっただとか,「測定した」とかの表記があるので,実験を意識したようにもみえるが,実際には文字式での問題となっており,無理やり実験っぽく仕立てあげているだけ(?)のように感じてならなかった。
 では,ザックリと第1問から解いた後に感じたことを簡潔に述べていくことにする。
 第1問は,毎度おなじみの小問集合であった。例年になく,しっかりと現象が理解できているかを問う良問が多かったように感じた。問1で,いきなり放射線の基礎知識が問われた。問2は,しっかりと現象を理解しているかを問う,なかなかの良問。問3は,うなりの基本問題。問4は,縦波についてしっかり理解しているかが問われた良問。
 第2問は,アトウッドの装置の問題で,重力加速度の大きさを実験で測定するというシチュエーションでの問題であった。前半は,よく見かけるような教科書例題レベルではあったものの,後半は,おもりが分裂したり,いきなり透明なパイプが登場したりと,とっつきにくそうに感じさせる出題であった。まぁ現象自体は,難解ではないのであるが……。
 第3問は,熱とエネルギーの問題。問4は,今回の物理基礎のなかで,唯一実験結果をよみとるという,出題であり,電気の分野とも絡めた良問であった。ただ,前半も後半も,ジュールの法則を使う同じような解き方となる問題になってしまっていたのは少し残念だった。
 ……そういえば,今年度は,磁場に関する問題は出題されていなかったなぁ。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に,放射線の基礎知識,力学的エネルギー保存則,うなり,縦波,の問題であった。問2は,物理現象を正しく理解できているかを問う,個人的にはなかなかの良問だったと感じた。問4の縦波の問題は,縦波というものに関するきわめて基本的な問題なのだが,受験生の中には苦手意識をもっていたり,よく理解できていなかったりして,正答を導けなかった層も,一定数いたのではなかろうか。
問1)問題冊子を開いて,いきなりの放射線の基礎知識を問う問題となる。受験生を焦らせるのには大きな効果があっただろう(苦笑)。教科書本文レベル。(a)と(b)が正しい。よって,@が正解。(c)放射線は不安定な原子核のことではないので誤り。(d)中性子線のほうがβ線より透過力は強いので誤り。【易】
問2)運動の現象がしっかり理解できているかを問う良問。特にBとCは,同じ角度45°での初速度であり,現象をよく理解していないと,おなじじゃんと思ってしまう可能性もあるだろう。最高点までの高さは,力学的エネルギー保存則で求めるのがよかろう。
 A:1/2・mv^2 = mg・hA  よって,hA = v^2/(2g)
 B:Bは斜方投射なので,小物体は放物運動をする。最高点では,水平方向に v/√2 の速さをもつ点に注意。
   1/2・mv^2 = mg・hA + 1/2・m・(v/√2)^2  よって,hB = v^2/(4g)
C:面がなめらかなので,摩擦力による仕事はされない。
   1/2・mv^2 = mg・hC  よって,hC = v^2/(2g)
以上により,hA = hC > hB となる。Eが正解。【普通】
問3)うなりの基本問題。まず,Bさんが振動数 1004[Hz]の音を出したとき,1秒間あたり 2回 のうなりが聞こえたことから,Aさんは 1006[Hz]か 1002[Hz]とわかる(f=|fA−fB|)。次に,Bさんが出す音の振動数を 1[Hz]増やした(=1005[Hz])ら,うなりの回数が少なくなったとのことから,Aさんは,1006[Hz]だとわかる。Eが正解。【易】
問4)縦波の変位と振幅についての問題。縦波というものについて,しっかりと理解できているかを問う良問。まず,図3 (b)のばねの変位が最も大きいのは点B(←ア)である。点Aは疎の位置であり,点Cは密の位置だから,どちらも,つりあいの位置からの変位は0である。次に振動数を変えずに振れ幅を大きくする。振動数が変わらないのであれば波長は変化しない。つまり,密になる点の間の距離 L は変わらない(←イ)。よって,Dが正解。【やや易】

第2問
 探究課題として,「滑車と二つのおもりを用いて重力加速度の大きさ g を測定する」実験をするというシチュエーションなのであるが,実際の内容は,文字式で考える場面が多く,実験の問題という感じはしなかった。実測データなどもなかったので,拍子抜けした。いわゆるアトウッドの装置の問題であり,運動方程式を立てて解く,ありふれた問題のようにはじめは思えた。しかし,後半では,おもりが分裂したり,透明なパイプが登場したりと,複雑の状況に移行していき,難度がかなり高くなったように見えると感じさせられた。ただ,よく問題文を読むと,ヒントがちりばめられており,また,前半の問題もヒントとなっていたりと,見かけ倒しに面食らった受験生の心を折らないような配慮は一応見られた。

問1)M=M′のとき,二つのおもりに v0 の初速度を与えたら,“鉛直方向に等速直線運動”させたとあるので,力はつりあっている。おもりにはたらく力のつりあいの式をたてると,S = mg となる。Aが正解。問題文の“等速直線運動”のヒントから,力のつりあいの式をたてればよいとわかるだろう。【やや易】
問2)M<M′のとき,おもりはMが上向きに,M′が下向きに等加速度直線運動をする。M′のおもりの運動に関して,等加速度直線運動の位置と速度の関係式( v^2 − v0^2 =2ax )をたてると,v^2 = 2ah となる。よって加速度は,a = v^2 / 2h となる。Bが正解。【普通】
問3)後半は,おもりが分裂するし,いきなり登場した透明なパイプに心が惑わされそうになるが,透明なパイプ内だけのおもりBの運動について問われているだけである。よく問題文を読めば,“Bだけがパイプ内部を等速度で……”とあるので,等速直線運動の問題に過ぎないことがわかる親切設計。距離Hを速さ v で時間 T かかって落下するのだから,H = vT の関係がすぐわかる。よって,求める速さは,v = H / T 。Dが正解。【やや易】
問4)“ h を4通りに変えて,測定した時間 T から速さ v を求めた”とあるが,文字で現象を考えているので,v^2 と h の関係さえわかればグラフもすぐわかる。h の部分は,BとCが一体となって落下している部分にあたるため,等加速度直線運動で落下している。それが見抜ければ,このときの加速度を a として,等加速度直線運動の位置と速度の関係式( v^2 − v0^2 = 2ax )で関係を求めればよい。実は,問2がヒントになっていたりもする。察しのよい受験生は,すぐに気が付いたかもしれない。はじめBとCは静止しているので,v0 =0 だから,v^2 = 2ah の関係があることがわかる。加速度 a は一定なので,v^2 は h に比例する(原点を通る右肩上がりの直線ということ)。@のグラフが正解。2つのおもりが分裂前であるから,おもりの質量が異なる場合のアトウッドの装置の問題と考えれば,よくある問題ではある。【普通】
問5)問4の傾きが b であるとのことなので,v^2 = 2ah = bh。つまり,b=2a の関係がある。ここで,図2の (i) において,それぞれ,運動方程式を立ててみよう。
 Aについての運動方程式:Ma = S − Mg
 BとC(一体)についての運動方程式:(M+m)a = (M+m)g − S
これらから張力 S を消去すると,g = [(2M+m)/m] ・ a = [(2M+m)/m] ・ (b/2) = [(2M+m)/2m] ・ b となる。よって,Bが正解。グラフの傾き b を用いるというところが目新しいが,解き方は,傍用問題集などの例題にありがちだと感じた。【普通〜やや難か?】

第3問
 熱とエネルギーに関する問題。ジュールの法則を使う,電気の分野とも絡めた,受験生が苦手とする(?)ような感じを受ける問題であった。また,今年度唯一の実験データ(っぽい)ものを使って解く問題が問4にあった。実験データはグラフではなく,測定値を表にしたものでの出題だった。ただ,後半の問題も,ジュールの法則を使う前半と似たような解き方になってしまった点は少し残念だった。

問1)熱容量という物理量をしっかり理解しているかを問う基本問題。“物体に熱(←ア)を加えると,その物体の温度(←イ)は上昇する。熱容量が大きい物体ほど,温まりにくく(←ウ),冷めにくい(←エ)”。確認しておくと,熱容量とは,物体の温度を1[K]上昇するのに必要な熱量のことである。【易】
問2)抵抗値 R の抵抗に,時間 Δt だけ電流を流したときに発生した熱量は,ジュールの法則により,Q = RI^2・Δt 。この熱量がすべて熱容量Cの物体の温度上昇に使われたときの温度変化を ΔT とすれば,Q = CΔT = RI^2・Δt となる。よって,このときの温度変化は,ΔT = (RI^2・Δt) / C となる。Bが正解。熱の分野と電気の分野をうまく結びつけた良問。【普通】
問3)実験において電流計と電圧計の使い方がわかっているかを問うた問題。高校現場ではあまりメジャーとはいいがたい液体の比熱の測定実験で問われているので,経験がない受験生もいたかもしれないが,電流計は測定したい部分に直列につなぎ,電圧計は測定したい部分に並列につなぐという基本が理解できていれば容易に正解にたどり着ける。Aが正解。【易】
問4)実際の実験結果(っぽい)測定値の表を使った問題。“っぽい”とかいているのは,時刻が正確すぎると感じたからである。実際にやってみるとこんなに正確に時刻が測定できるとは思えない。……とはいえ,データロガーとか使えば可能かも……(前言撤回?)。表1からわかることは,スイッチSを閉じてから開くまでがちょうどピッタリ Δt = 300[s]。よって,抵抗で発生した熱量は,ジュールの法則(←今回2回目の登場)Q = RI^2・Δt = VIΔt = 3.00×1.40×300 = 1260[J]。よって [113] は,Eが正解。液体の比熱を c とすると,温度上昇に使われた液体の熱量は,Q = mcΔT = 1260[J]とかける。また,表1よりスイッチを閉じてから開くまでの温度変化は,ΔT = 21.1 − 19.7 = 1.4[K]とわかる。よって,求めたい液体の比熱は,c =Q / (mΔt) = 1260 / (300×1.4) = 3.0[J/(g・K)]。[114] は,Bが正解。問2と似たような解き方になってしまう点が少し残念。熱容量 C と比熱 c の違いが理解できているかを問いたかったのであろうか……? それにしても,キレイに割り切れるデータなので,やはり,測定値(っぽい)と言って過言ではなかろう。【普通】
問5)実際に実験すると測定に誤差が出るということに関した,誤差の理由を考察させる問題。とはいえ,これも比熱という物理量を理解しているかが問われている設問にすぎない。“問4では,抵抗で発生した熱がすべて液体の温度上昇に使われるものとしたが,実際には熱の一部は,容器,抵抗,攪拌棒などの温度上昇にも使われる。このことを無視しているために,問4で求めた比熱 c の値は,正しい値よりも大きい(←オ)”。比熱とは,1[g]の物体の温度を1[K]上昇するのに必要な熱量のことである。考え方として,例えば同じ熱量を与えたときを比較する。すべてが液体の温度上昇に使われる場合と比べると,実際には温度上昇分が小さくなるはずだ。つまり,1[g]の液体の温度を1[K]上昇するのに必要な熱量が,正しい値よりも大きくなるというわけだ。また,“この差は,液体の量を増やせば小さくなる(←カ)”。より液体の質量が大きく(量が多く)なるほど,それ以外の温度上昇する部分の割合が小さくなるので,誤差が減るというわけだ。以上により,@が正解。【やや易】


以上。



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