2023年度 大学入学共通テスト「物理」 の講評&説明


2023年02月10日更新


数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2023年度 大学入学共通テスト「物理」 の講評&説明

(C) Copyright 2023 MATSUNO Seiji


[はじめに]

 今年度は,「大学入学共通テスト」の3年目だ。新型コロナウィルスの第8波の真っただ中での実施となった。大学入学共通テスト3年目も,落ち着いて取り組ませてくれない状況となった。
 さて,「大学入学共通テスト」で,これまでの「大学入試センター試験」から変化させる新傾向の出題方針として挙げられていることをまとめておくと,次の3点であった。今年度の問題では,どこまでそれらが反映されているのかも念頭に置きつつ,講評していくことにする。

 1.“知識の理解の質を問う問題”
 2.“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”
 3.“授業において生徒が学習する場面や,社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”


[全体講評]

 まず,解いてみての僕の第一印象。これまでやや難度の高い問題として問題集などでみかけることのあったものが,大問として登場しているということにとにかく驚いた。具体的には,第2問は空気抵抗の標準問題であるし,第3問はこれまで二次個別試験でたまに見かけた発展問題レベルの斜めドップラー効果がややマイルドにはされてはいるものの出題がなされ,さらには,第4問はコンデンサーの過渡現象について詳しく問われた標準問題であった。題材としては,目新しいものではないのだが,これまでやや難度の高い問題として受験生の目に触れる機会があった問題が,まさか今年度の共通テストで問われることになろうとはっ!
 第1問の小問集合は,“知識の理解の質を問う問題”に位置づけられる問題ばかりだった。定性的な問われ方をしているものが多く,正しく現象を理解しなければ正解へたどり着けないものもあった。なかでも問3は運動量と力学的エネルギーに関する理解度を問うた良問であったと思う。……受験生には難問と感じたかもしれないが。
 第2問は,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”,“授業において生徒が学習する場面や,…(中略)…,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”の出題であった。受験生の多くは,空気抵抗についてしっかりと演習問題をこなしているとは考えにくいので,とっつきにくかったかもしれない。会話形式でやや作為的な先生のセリフで,空気抵抗力のはたらき方を紹介しているので,じっくり読めば,事前知識がなくとも正解へたどり着けただろう。測定した実験結果がキレイすぎる感じはするが,新傾向の出題方針にのっとった問題だったといえよう。
 第3問は,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”にあたると思われる,斜めドップラー効果のいわゆる発展問題。角度をμとして解くところまでは要求していないものの,多くの受験生に斜めドップラー効果の現象を理解させるために,とにかく説明を丁寧にしてマイルドにしているだけであり,実際の実験をしたわけでもなく,これまで二次個別試験レベルだった斜めドップラー効果の問題を,共通テストで,しかも,なぜここまでして扱う必要があったのか? ……と,疑問を残しただけのように僕には感じられた。
 第4問は,コンデンサーの過渡現象(放電)の標準問題。これも,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”,“授業において生徒が学習する場面や,…(中略)…,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”の出題であった。実験結果の評価をどのようにするべきかを会話の中で考えさせる出題となっていた。新傾向の出題方針にのっとった問題だった。とくに,最後の問5は,難易度も高くなく,突拍子もない発想でもなく,非常に現実的でありながら,それまでとは別の方法を用いて実験結果を扱うという,実際の実験を追随するような流れを会話文で実現した秀逸な問題だったと感服した。
 また,今年度も,大学入学共通テストになって登場するようになった「□.□×10^□」の解答形式は,第2問の問2で1箇所だけに登場していた。昨年度と今年度をみると,無理やり計算問題をつくってこの形式で解答させているようにしか感じられないので,次年度以降はこの形式で解答させるのは廃止にした方が賢明なのではと思うのだがいかがだろうか。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に,力のモーメントのつりあい,理想気体の状態変化,運動量と力学的エネルギー,一様磁場中の荷電粒子の運動,光電効果,の問題であった。これらは,新傾向の“知識の理解の質を問う問題”に位置づけられる問題ばかりだった。定性的な問われ方をしているものが多く,正しく現象を理解しなければ正解へたどり着けないものもあった。問2は1サイクルの状態変化を扱っているため,断熱変化,定積変化,等温変化についての正しい理解が必要。問3は運動量と力学的エネルギーに関する理解度を問うた,受験生は難しく感じたかもしれないが,なかなかの良問であったと個人的には思った。
問1)力のモーメントのつりあいを使って求める基本問題。片足立ちの右足の位置のまわりに力のモーメントのつりあいの式を立てる。体重計aにかかる力 をFa,体重計bにかかる力を Fb,反時計まわりを正とすれば,2×Fa − 1×Fb = 0 となる。また,板にはたらく力のつりあいの式は,Fa + Fb = 60g 。これらを連立すると,Fa = 20g,Fb = 40g となる。よって,Bが正解。まぁ,わざわざ力のモーメントのつりあいの式を立てるまでもなく,この手の問題を経験したことのある受験生であれば,体重計にはたらく力は内分比の逆比になるということを利用すると瞬時に正解が導ける。【易】
問2)理想気体の状態変化についての問題。1サイクルの状態変化を扱っているため,断熱変化,定積変化,等温変化についての正しい理解が必要。図2の P−V 図を読み取れるかも問われた問題。また,気体が吸収した熱量はそれまでに求めたものが導出となっているため,容易に正解が得られたはずだ。
   まず,サイクルを一周する間の内部エネルギーの変化について。Aからサイクルを一周するということは,最終的にもとの状態Aに戻るわけなので,温度変化は,ΔT=0 である。よって,内部エネルギーの変化は,ΔU = (3/2)・nRΔT = 0。よって,[ 2 ]はBが正解。【普通】
   次に,サイクルを一周する間の気体がされた仕事の総和を考える。まず,A→B(断熱変化)では,気体が膨張していることから,外へ仕事をする。図2の P−V図 で,V軸と囲まれた部分の面積が気体が外へした仕事量である。つぎの,B→C(定積変化)では,気体の体積が変化しないので仕事は0だ。最後の,C→A(等温変化)では,“圧縮してもとの状態に戻”したとあるのでわかるように,気体は外から仕事をされる。図2の P−V図 で,V軸と囲まれた部分の面積よりも,B→C(定積変化)の面積の方が大きいので,気体がされた仕事の総和は,正(←ア)となる。
   最後は,サイクルを一周する間の気体が吸収した熱量の総和を考える。熱力学第一法則(ΔU=Q+W:Wは気体が外からされた仕事)において,一周する間の内部エネルギーの変化は,ΔU=0であるので,Q=ΔU−W=−W となる。次に,直前で求めたように一周する間に気体が外からされた仕事Wの総和は正なので,求めるサイクルを一周する間の気体が吸収した熱量の総和は Q=−W < 0,すなわち負(←イ)とわかる。
以上により,[ 3 ]の正解はBである。【普通】
問3)力学的エネルギーと運動量に関する問題。運動の状態により,それらが保存するのか保存しないのかを正しく判別できるかを問うた良問だったと思う。
   まずは,“そりが岸に固定されていて動けない場合”。ブロックは固定されているため動かないそりの上を動摩擦力を受けながら滑っていく。ブロックはだんだんと遅くなって静止する。つまり,ブロックの運動量は 0 となるから減少している。そりははじめから最後まで動いていないので運動量は 0 のまま。よって運動量の総和は保存しない。力学的エネルギーについて考えると,ブロックは動摩擦力の仕事を受けて静止するので,減少して 0 となる。そりは動いていないので,力学的エネルギーは 0 のままである。よって,力学的エネルギーの総和も保存しない。Cが正解(←[ 4 ])。【易】
   つぎは,“そりが固定されていておらず,氷の上を左に動くことができる場合”。これは,2物体の衝突現象(衝突後に一体となって動く場合:完全非弾性衝突)であることに気が付けば,運動量の総和は保存し,力学的エネルギーの総和は保存しないとわかる。Aが正解(←[ 5 ])。【普通】ちなみに,衝突前後で力学的エネルギーの総和が保存するのは,弾性衝突(はねかえり係数 e=1 の衝突)の場合だけである。
問4)一様磁場中の荷電粒子の運動についての問題。まずは,フレミングの左手の法則などから,荷電粒子が磁場から受けるローレンツ力の向きを判断し,それを向心力としたと円運動をしているAかCに絞り込む。次に,荷電粒子が同じ速さで等速円運動をしていることより半径を考える。等速円運動の運動方程式を立てると,mv^2/r = qvB であるから,r = (v/qB)・m となり,半径は荷電粒子の質量 m に比例することがわかる。よって,正の荷電粒子のほうが負の荷電粒子よりも質量が大きいので,正の荷電粒子のほうが円運動の半径が,負の荷電粒子よりも大きい。つまりCが正解。【普通】
問5)光電効果の問題。今年度の「物理」で唯一の現代物理学の分野からの出題であった。
光電効果における,飛び出す電子の運動エネルギーの最大値 K0 と照射する光の振動数 ν の関係を表した基本的なグラフからの出題。プランク定数 h は,このグラフにおける傾きである。よって,h = W/ν0 とわかる。Dが正解。【易】ちなみに,W は仕事関数,ν0 は光電効果が起こるために必要な最小の振動数で,限界振動数である。

第2問
 空気抵抗力を受ける場合の物体の落下運動についての問題。“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”,“授業において生徒が学習する場面や,…(中略)…,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”の出題であった。実際に行なった実験の結果を考察したり,どのように次の実験をするべきかを考察したりと,新傾向の出題方針にのっとった問題だった。ただ,受験生の多くは,空気抵抗についてしっかりと演習問題をこなしているとは考えにくいので,とっつきにくかったかもしれない。会話形式で実験結果の考察を進めており,やや作為的な先生のセリフで,空気抵抗力のはたらき方を紹介しているため,じっくり読めば,事前知識がなくとも正解が得られたとは思われる。題材としては目新しいものではなかった。
問1)終端速度の説明のセリフの穴埋め問題。
   “物体が空気中を運動すると,物体は運動の向きと逆向き(←ア)の抵抗力を空気から受けます。初速度0で物体を落下させると,はじめのうち抵抗力の大きさは増加(←イ)し,加速度の大きさは減少(←ウ)します。やがて,物体にはたらく抵抗力が重力とつりあうと,物体は一定の速度で落下するようになります。このときの速度を終端速度とよびます。”
   Eが正解。【易】
問2)表1の測定結果から n=3 のときの終端速度 vf を求める。表1をみると,区間 40〜60[cm]以降は,20[cm]の落下に要する時間が 0.13[s]で一定になっていることが分かる。つまり,これが求めたい n=3 のときの終端速度 vf だ。vf = 0.20[m]/0.13[s] = 1.5384… ≒ 1.5×100[m/s]。よって,[ 9 ],[ 10 ],[ 11 ]は,順に@,D,(0)が正解。完答のみ。【易】
 大学入学共通テストになって登場するようになった「□.□×10^□」の解答形式で答える今年度唯一の問題であるのだが,わざわざこの解答形式で答えさせるメリットが全く理解できない。無理やりこの形式で解答させるのであれば,以後,この解答形式は廃止した方がいいのではないだろうかと感じたがいかがか。
問3)図3が予想と少し違うことについて考察を進めていく。ちなみに予想は,物体の質量 m がアルミカップの枚数nに比例することから,vf = mg/k ∝ n となるので,終端速度 vf の大きさは n に比例するというものである。比例していないと判断できる根拠は,Aの“測定値のすべての点のできるだけ近くを通る直線が,原点から大きくはずれる。”のみである。とびとびに測定した結果の点を直線で結んで比例していると評価するという方法は,小学校の理科から実によく行ってきた手法であるだろうと予想されるので,容易に正解を選べただろう。【易】
問4)ここで,先生によるやや作為的なセリフによって,“空気抵抗力 R が v^2 に比例するとみなせる場合”について考えていくことになる。ちなみに,これはニュートンの抵抗法則とよばれる。また“空気抵抗力 R が v に比例するとみなせる場合”はストークスの法則という。
   速さの2乗に比例する抵抗力のみがはたらく場合に,グラフが原点を通る直線になるようにするには,vf = √( mg/k´) ∝ √m ∝ √n と変形するとわかるように,縦軸 vf,横軸 √n とするか,両辺を2乗した,縦軸 vf^2,横軸 n を選べばよい。よって,CとGが正解。実験結果をグラフにするときの方法について考察させるという問題は目新しかった。実際の実験時の結果処理の考察方法について問うた,新傾向らしい問題であった。片方のみの正解でも3点がもらえた。【普通】
問5)つぎに,これまた先生によるやや作為的なセリフによって,“落下途中の速さが変化していく過程で,R と v の関係を調べる”ことになる。
   y−tグラフ から v−tグラフ をつくり,次に加速度の大きさaを調べるために,(c) v−tグラフ から Δt ごとの速度の変化を求めることによって a−tグラフ をつくる(←エ)。これは,打点タイマーなどによって加速度を求めた経験のある受験生にはなじみ深いデータ処理方法であろう。
   アルミカップが終端速度になる前の落下する加速度の大きさ a を考えているので,鉛直下向きを正として運動方程式を立てると,ma = mg − R 。よって,R = m(g−a) となる。これは,(c)(←オ)だ。
   以上により,Hが正解とわかる。【普通】

第3問
 斜めドップラー効果の問題。おそらく“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”にあたると思われるのだが,特に目新しいシチュエーションであるわけでもなく,二次個別試験でときおり見掛けることのある発展問題をややマイルドにした出題であった。角度を θ として解くところまでは要求していないものの,多くの受験生に斜めドップラー効果の現象を理解させるために,とにかく説明を丁寧にしているだけであり,実際の実験をしたデータを載せて処理するというわけでもなかった。これまで二次個別試験レベルだった斜めドップラー効果の問題を,共通テストで,しかも,なぜここまでして扱う必要があったのか? ……と,疑問を残しただけのように僕には感じられた。ちなみに,手元にある教科書をいくつか調べてみたが,どの教科書も参考などの扱いであり,角度を θ として扱う旨の簡単な記述が見られた程度であった。
問1)まずは音源が等速円運動をする場合から。音源にはたらいている向心力の大きさは,等速円運動の運動方程式を立てることで求まる。向心加速度が a = v^2/r であるから,mv^2/r = F。次に,音源が点Cから点Dまで半周する間に向心力がする仕事を求める。向心力のはたらく向きが常に音源の動く向きに垂直であるから,向心力がする仕事は 0 だ。これは,点Cから点Dまでに限らず,等速円軌道をしているのでどこでも 0 だ。Dが正解。ご丁寧に,AまたはCを選んでしまっても5点のうち1点ではあるが,部分点がある。なぜかB(←仕事が 0 のみ正解)には部分点は与えられないようだ。【普通】
問2)いよいよ斜めドップラー効果らしい問題となる。“音源の速度の直線PQ方向の成分によるドップラー効果が起こるから”と,丁寧に考え方を問題文中で説明してくれているので,直線運動でしかドップラー効果を扱った経験のない受験生に配慮をしたつもりなのだろう。“f が f0 と等しくなる”とは,ドップラー効果が起こっていない状態と同じになるのは音源がどこを通過した瞬間に出した音を測定した場合を問うているわけだ。それは,音源の速度の直線PQ方向の成分が0となるところである。音源は円軌道の接線方向に一定の速度で等速円運動しているので,点Cおよび点Dを通過した瞬間のみ直線PQ方向の成分が 0 となるから,ドップラー効果が起きない。Eが正解。【やや難】
問3)音源が点A,点Bを通過した瞬間をそれぞれ別々に,音源が近づく場合,音源が遠ざかる場合として,直線運動する場合のドップラー効果として考える。
    点A  (音源) V−v = f0λA ……@
        (観測者)V = fAλA ……A
   @とAを連立して,fA = [V/(V−v)]・f0 ……B
    点B  (音源) V+v = f0λB ……C
        (観測者)V = fB λB ……D
   CとDを連立して,fB = [V/(V+v)]・f0 ……E
   BとEを連立して f0 を消去して整理すると,fB = [(fA−fB)/(fA+fB)]・V となる。
   以上により,Aが正解。fA と v のどちらかだけでも正解であれば,部分点として5点のうち1点ではあるがもらえるようだ。【普通】
問4)次は観測者が等速円運動をする場合。
   観測者が点A,点Bを通過した瞬間をそれぞれ別々に,観測者が音源に近づく場合,観測者が音源から遠ざかる場合として,直線運動する場合のドップラー効果として考える。
    点A  (音源) V = f0λA ……F
        (観測者)V+v = fAλA ……G
   FとGを連立して,fA = [(V+v)/V]・f0 > f0
    点B  (音源) V = f0λB ……H
        (観測者)V−v = fBλB ……I
   HとIを連立して,fB = [(V−v)/V]・f0 < f0
   また,観測者が点C,点Dを通過する瞬間はドップラー効果は起きないので,観測者の測定する音の振動数は f0 である。
   以上により,fA > f0 > fBであるから,@が正解。【普通】
問5)図1および図3について,公式のみで正解を求めていないかを確認するような,しっかりとこの斜めドップラー効果の現象が理解できているかを問う“知識の理解の質を問う問題”としての間違い探しの問題であった。(a)大きい→小さいであるため誤まり。(b)原点Oが動いていないので正しい。(c)図3では音源が動いていないので正しい。(d)点Cと点Dではドップラー効果が起こらないので音波の波長は同じになるから誤まり。以上によりCが正解。【普通】

第4問
 電気の分野のコンデンサーの過渡現象(放電)が問われた。これは,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”,“授業において生徒が学習する場面や,…(中略)…,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”の出題であったと思う。コンデンサーの過渡現象は,やや難易度が高い標準問題レベルだと思う。また,問題の中で,実験結果の評価をどのようにするべきかを会話の中で考えさせる出題となっていた。この点は,新傾向の出題方針にのっとった問題だった。今後もこのような傾向が続くものと思われる。ただ,実験結果として提示されたグラフがキレイすぎるのではあるが……。

問1)文章の穴埋め方式にて電場の定義が問われた。
   (ア)極板間の電場の大きさ E と V,d の間の関係は,電場の定義から,E = V/d である。電場の単位が[V/m]であることを思い出しても正解が導けたはずだ。サービス問題。【易】
   (イ)二つの極板間の電気力線が4πk0Q[本]であることより,単位面積あたりの電気力線の本数が電場の強さであるから,E = (4πk0Q)/S = V/d。ここから,Q = [S/(4πk0d)]・V = CV とかけることより,求める比例定数(電気容量)は C = S/(4πk0d) である。“二つの極板間の電気力線が4πk0Q本”と書いていなかったなら,正答率はかなり下がったものと思われる。【普通】
   以上により,Gが正解。
問2)図3のグラフにおいて,スイッチを開いた直後(コンデンサーの電圧は5.0[V])に電流計が100[mA](=0.1[A])を示していることから,コンデンサーと抵抗と電流計の閉回路にてオームの法則(V=RI)を適用する。オームの法則より,R = V/I = 5.0/0.1 = 50[Ω]。Fが正解。【やや易】
問3)グラフの面積から電気量を求める問題であり,実験結果の処理方法が出題されている。“図4の斜線部分の面積は,…(中略)…コンデンサーから放電された電気量に対応している”とあるので,問題文にて I−tグラフ の面積が電気量 Q に対応していることを教えてくれている親切設計の問題だった。ちなみに電流の定義式(I=Q/t)から,Q=It の関係があることは書かれていなくても気づいてほしいところではある。
   図4のグラフの面積 1[cm^2]は,1[cm^2]=10[mA]×10[s]=0.01[A]×10[s]=0.1[C]。[ 23 ]はBが正解。【易】
   図4の斜線部分の面積は 45[cm^2]であったことより,コンデンサーはじめに蓄えられていた電気量は,45×0.1 = 4.5[C]とわかる。コンデンサーに蓄えられる電気量は Q=CV の関係であることより,求めるコンデンサーの電気容量(Cのこと)は,C = Q/V = 4.5/5.0 = 9.0×10^(−1)[F]と求められる。[ 24 ]はGが正解。【普通】
問4)問3の方法で,t=120[s]のときにコンデンサーに残っている電気量を無視したことについて実験結果の評価をどのようにするべきかを会話の中で考えさせる出題であった。これぞ,新傾向の“授業において生徒が学習する場面や,…(中略)…,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”の出題となっていた。
 Aさんが問題提起をし,Bさんが電流値が t=0[s]での電流値の 1/2 倍,1/4 倍,1/8 倍になるまでに 35[s]間隔になっていることに着目。それを受けてCさんが,電流の大きさが充分小さくなる目安として 程度になるまでと提案する。
 はじめの 程度になるまでの時間 t は,(1/2)^(t/35) ≒ 1/1000 を解けば,t≒350[s]と求まる。解き方はいろいろあるとは思うが,そんなに手間でもないので,1/2 をどんどん掛けていくことで求めてみよう。1/2,1/4,1/16,1/32,1/64,1/128,1/256,1/512,1/1024 と,1/1000 程度になるのは,1/2 の10乗のとき,つまり t/35 = 10 のときであることがわかるので,t = 350[s]である。Cが正解。【普通】
問5)先生の登場で,時間をかけずに電気容量を正確に求めるほかの方法を考えることになる。Aさんが,コンデンサーに蓄えられた電荷が抵抗を流れるときの電流はコンデンサーの電圧に比例すること,コンデンサーに残っている電気量もコンデンサーの電圧に比例することの両者を組み合わせで電流と電気量の関係がわかりそうだと提案。Bさんが,電流の値が t=0[s]での値 I0 の半分になる時刻 t1 に注目し,グラフの面積を用いて t=0 から t=t1 までに放電された電気量 Q1 を求め,その2倍が t=0 にコンデンサーに蓄えられていた電気量 Q0 = 2×Q1(←ウ)と求められるという方法を考えつく。最初の方法(t=120[s]以降を無視した場合)で求めた電気容量は,正しい値より(無視した分だけ)小さかった(←エ)と予想。Cさんが実験すると,10%も違うことが分かったので,充分な放電時間をかける実験をもう1回やってみようと結ぶ。
   よって,Dが正解。よく会話文を読んで何をそれぞれの登場人物たちが言わんとしているのかを考えれば,おのずと正解にたどり着けたと思う。新傾向の“授業において生徒が学習する場面や,…(中略)…,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”の出題として,難易度も高くなく,突拍子もない発想でもなく,非常に現実的で,実際の実験時に実験結果をどのように扱うのかといった方法の考察を追随するような秀逸な問題だったと感服した。


以上。



無断転載や引用をかたく禁じます。一言、メールでご相談くださいな。


トップへ
戻る


(C) Copyright 2001-2025 MATSUNO Seiji