2021年度 大学入学共通テスト「物理基礎(第2日程)」 の講評&説明


2021年02月03日更新


数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2021年度 大学入学共通テスト「物理基礎(第2日程)」 の講評&説明

(C) Copyright 2021 MATSUNO Seiji


[はじめに]

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け,「大学入学共通テスト」は,今回新たに実施されるだけでなく,本試験の2週間後にも第2日程と称して,学習の遅れてしまった受験生や,本試験(第1日程)で,体調不良等による受験の延期に対応するため,本試験扱いで実施された。第1日程での試験の内容が,これまでの「大学入試センター試験」と大きく傾向が変更されていたため,第2日程の問題は,どうなっているのか,おそらく,日本中が気になるところであっただろう。
 ところで,大学入試センターに公開された解答をみると,右上に(X)と書いてあるのにお気づきか。ちなみに,先日実施された第1日程の右上には(Y)とある。もしかして,第2日程がなかったなら,(X)と書かれた今回実施された第2日程の試験が本試験として実施されていたのかもしれない……。
 すでに,本試験(第1日程)のところで,これまでの「大学入試センター試験」から変わるであろう問題の傾向については述べているので,まとめとしての以下の3点だけ再掲しておく。

 1.“知識の理解の質を問う問題”
 2.“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”
 3.“授業において生徒が学習する場面や,社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面,資料やデータ等をもとに考察する場面など,学習の過程を意識した問題の場面設定”


[全体講評]

 本試験(第1日程)をやった直後の感想として,「計算の量が多すぎる……。手計算だと時間が足りないんではないか?」であったのだが,第2日程では,計算が面倒だったと感じたのは第3問くらいであった。つまり,数値計算ばっかりさせられた(ような印象であった)第1日程の試験の傾向とはまた異なっていたということである。また,第1日程と異なり,文字式による解答を要求している問題が,第2問のAの問1で1問だけ存在した。さらに,数値計算の必要となる問題においても,計算の正確さが要求された第1日程と異なり,大体の値が概算できれば,正解が選べるというものが多かった。必要とされた有効数字は1桁程度のものも存在した。
 第2日程でも,試行調査で行われた“資料やデータ等をもとに考察する場面”にあたる問題が第3問に登場した。一方,第1日程では登場しなかった,“授業において生徒が学習する場面”にあたるであろう,測定装置の使い方として,第2問のBでは,電流計の数値の読み取り方から,測定したデータの処理の方法まで,実験の流れを再現する問題が出題されていたことも特筆すべきところだろう。また,第1日程で登場した会話形式のものは出題されなかった。さらに,第1日程にはあった,計算結果を直接マークするという解答方法もなかった。第1問の問1で,10の指数部分 を答える問題があったが,直接マークではなく,選択肢からの選択であった。
 では,おおまかに,問題を順に見ていこう。小問集合の第1問。問2は,電流の定義を問うた問題であるが,問題文の説明がわかり,あたえられた図をよく理解できていれば,正解が導かれる。“知識の理解の質を問う問題”を目指したのであろうか。次に,音波の共鳴実験として最もスタンダードな第2問A。「大学入学共通テスト」において,ここまで典型的な問題が出るとは逆に驚いた。そして,実験の流れを意識した第2問B。電流計の扱い方から測定されたデータ処理まで,実験手順を順に追うような形の出題で,これまでの「大学入試センター試験」では見られなかった新傾向であった。個人的には,こういった問題は,大いに歓迎したい。そして,力学の第3問。“資料やデータ等をもとに考察する場面”の問題設定となっており,どう数値を読み取るかが問われた問題であった。第1日程と異なり,計算の精度はさほど必要ではなく,大体の概算ができれば正解が選べるというものであった。また,第1日程と同様に,第3問はA,Bとわかれていなかった。
 次に,問題の質であるが,第1日程同様,単に知識を問うている問題が減り,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”として,少し考えないと正解が導かれない問題へと傾向が明らかに変化しているようだ。たとえば,音波の共鳴実験として最もスタンダードな第2問Aであっても,問2の設問では,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”となっていた。
 分野としては,まんべんなく全分野から出題されているように見えるが,個人的には,交流の部分だとか,放射線に関する部分だとかの出題が全くなかったのは残念である。
 先に実施された第1日程の問題よりも,今回実施された第2日程の問題の方が,問題の難易度としても,数値計算の分量としても,適正であったと思われる。……であるため,この第2日程の問題を,より多くの受験生が受験したであろう第1日程の問題としておけばよかったのに……と思ったのは僕だけだろうか。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に,水圧,電流の定義,パルス波の固定端反射,熱量保存の法則,の問題であった。問4で数値計算がやや面倒である以外は,基本的な内容を問うている問題ばかりであり,おそらく,“知識の理解の質を問う問題”にあたるであろうが,新傾向らしき出題とは感じられなかった。
問1)水圧が,p=p0+ρgh で求められることを知っているかどうかの問題である。解答方法として,10の指数部分 だけを答えるというこれまでに見なかった形式が取られている。水深 1.0[m]のところでの水圧は,p1=p0+ρg×1.0[Pa]。水深 2.0[m]のところだと,p2=p0+ρg×2.0[Pa]。その差は,p2−p1=(p0+ρg×2.0)−(p0+ρg×1.0)=ρg×1.0=(1.0×10^3)×9.8×1.0=9.8×10^3[Pa]。指数部分には,3 が入る。Bが正解。ご丁寧に,“ 1[Pa]=1[N/m^2]”とも書かれている。【易】
問2)電流の定義の問題である。物理基礎の教科書では,I=enSv とかかれている部分にあたる。ただ,教科書の本文ではなくコラム扱いなので,いわば,発展的内容に相当する。しかし,問題文において,“円柱状の金属導線を流れる電流の大きさは導線の断面を単位時間に通過する自由電子の電気量の大きさである。”との説明があるので,あたえられた図が理解できたならば,解けただろう。自由電子はすべて同じ電気量(−e)をもつので,図の破線の断面を単位時間に何個の電子が通過するのかを図1と比較すればよい。順に見ていこう。まずは,図1から。速さが u なので,1秒後に,図では距離 u だけ各自由電子が右へ移動するわけだ。すると,図1では破線の断面を単位時間で 2個 の自由電子が通過することがわかる。同様に表1では,A が 6個,B が 4個,C が 2個,D が 2個,E が 1個,F が 1個,それぞれ通過する。よって,図1と同じ 2個 が通過するものは,CとD である。Bが正解。ここでは図をもとに正解を導いたが,I=enSv の式から導いてもよい。【普通】
問3)パルス波の固定端反射後の波形を選ぶ問題である。基本問題。速度 2[cm/s]で進むということから,5[s]後には 10[cm]進んでいる。固定端で反射したパルス波の先端は,固定端から 4[cm]の位置,すなわち,x=6[cm]の位置にあるはずだ。固定端反射では,位相が逆になって反射するから,Cが正解。【易】
問4)熱い(T1=42.0[℃])のアルミニウム球を,常温(T2=20.0[℃])の水の中に入れる実験である。熱量保存の法則を使う,典型的な基本問題である。温度上昇 T3−T2 が小さくなるためには,常識的に考えてもわかるように,水がより多ければよい。つまり水の質量 M が大きく(←ア)なるほど,温度上昇 T3−T2 が小さくなる。次に,“ T3−T2 が 1.0[℃]になるようにするには〜(以下略)”を求めるには,熱量保存の法則の式を立ててしっかり計算する必要がある。T3−T2=1.0[℃]より,T3=21.0[℃]とわかる。
   温度が上昇した物体(水)が得た熱量 = 温度が下降した物体(アルミニウム球)が失った熱量
   M×4.2×(T3−T2) = 100×0.90×(T1−T3)
   M×4.2×1.0 = 100×0.90×(42.0−21.0)
これを解けば,M=450[g]とわかる(←イ)。@が正解。よくある,熱容量と比熱の混在した問題よりはるかに易しかった。【易】

第2問
 Aは,典型的な気柱共鳴実験の実験であった。文字式での解答を選択する問題で,文字式での解答を要求する問題は,第1日程にはなかったので,この第2日程で初お目見えしたわけだ。典型的な問題ではあるが,問2では,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”という新傾向を意識した設問にはなっていた。
 Bは,電流計の数値の読み取り方から,測定したデータの処理の方法まで,実験の流れを再現する問題が出題された。実際にこのような実験を行い,かつ,測定装置を正しく使用し,しっかりと測定値を読み取り,それらのデータを処理した経験があればたやすいが,この問題で要求しているところまでしっかりと実験を行っている現場がどれほどあるのかというと,残念ながら,おそらくそんなには多くないのではないだろうか。……と仰々しくかいたものの,比例関係となることがわかっている実験であるから,データ処理も容易にできただろう。

問1)2回目に共鳴が起こる位置と,最初に共鳴が起こる位置の差が,ちょうど半波長になるということを用いればすぐ求まる。つまり,λ/2 = L2−L1 であるから,λ=2(L2−L1)。よって,求める音速は,V=fλ=2f(L2−L1)。Cが正解。【易】
問2)実験室の気温が下がると何が変わるかといえば,音速が遅くなる。これは,空気中の音速の式( V = 331.5+0.6t )からわかる。スピーカーからは一定の振動数 f の音が出ているわけなので,V = fλ ∝ λ の関係により,気温が下がって音速が小さくなったので,音の波長が短くなった( λ´とする)ために,共鳴が起こらなくなったわけだ。つまり,[6]の正解はA。
このあと,ピストンの位置を左に動かしていくと,短くなった波長での 3/2・λ´の位置で1回目の共鳴が起こる。さらに,左にピストンが移動すると,1/2・λ´の位置で2回目の共鳴が起こる。つまり,[7]の正解はAである。“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”という新傾向を意識した設問にはなっていたものの,さほど難しくはなかっただろう。【普通】

問3)電流計の目盛りを読み取る問題である。“最小目盛りの 1/10 まで読み取る”とあるので,図4の針の位置と目盛りからは 2.07 と読み取らねばならない。いま,図3でわかるように,300[mA]のレンジであることより,3 の目盛りが 300[mA]を示すことになるから,正解は,207[mA]=0.207[A]となる。Gが正解。【易】
問4)問題文にあるように,“電流計の針が振り切れず,かつ,電流がより正確に読み取れるように”端子を選んだとのこと。つまり,例えば,30[mA]端子であれば,測定値が 30[mA]ギリギリのところまでは,30[mA]端子を使用したということだ。では,図5の測定データを電圧の低い方から見ていこう。2[V]のところは,30[mA](=0.030[A])より低い。ところが次の 4[V]のところでは,45[mA]と読み取れるから,300[mA]端子を使用しないと測定できないことがわかる。次に,300[mA]以下の測定値で最大の値となったのは,30[V]のところ。32[V]以上にしたときは,3[A]端子を使用しないと測定できない。以上により,@が正解。実際にこのような実験を行う場合は,はじめは,必ず最大のレンジである 3[A]端子につないで測定をする。測定値が 300[mA]より小さければ,そこで 300[mA]端子につなぎかえて測定する。さらに 30[mA]より小さければ,30[mA]端子につなぎかえて測定するのである。これは,測定装置である電流計を壊さないようにするためだ。【易】
問5)測定したデータの分析方法である。比例することがわかっているオームの法則を求めるために,より正確に決定するためには,Cの“図5でなるべく多くの測定点の近くを通るように引いた直線の傾き”を使うのがよい。いわゆる,フィッティングというやつである。[10]の正解はC。
抵抗値を求めるには,フィッティングした直線上の,好きなところの値を使用すればよい。たとえば,そうだな,僕は,40[V]のときに 0.40[A]となる値を利用して求めようかな。すると,オームの法則(V=RI)より,R = V/I = 40/0.40 =100[Ω]とわかる。[11]の正解はDとなる。
この問題では,新傾向である“授業において生徒が学習する場面”および,“思考力,判断力,表現力を発揮して解くことが求められる問題”として出題されたと思われる。あなた自らが実際に実験をするときに,ここで問われたような点を注意して実験していますか? という,出題者からの問いかけの声が聞こえてくるような気がしないでもない……。あと,問題の難易度としては非常に易しかった。【易】

第3問
 第1日程の「物理基礎」に比べて,ここまで,数値計算でほとんど苦しむことがなかった(ような気がする)が,この第3問では,実際に測定された(と思われる)データを利用しているため,数値計算はさけられなかった。電車という“社会生活や日常生活の中から課題を発見し解決方法を構想する場面”を設定し,さらに,“資料やデータ等をもとに考察する場面”へとつなげている問題であり,力学の内容でありながら,電力量を求めるという設問も登場するという,実に,凝りに凝った問題だったと思う。
 しかし,第1日程であったような,数値計算の結果を有効数字3桁の精度で解答させるという鬼畜極まりない(?)解答方式であるようなことはなく,大体の概算で見積もれば正解が選択できるというような選択肢であった点が大きく異なる。ちなみに,今回のように,有効数字1桁程度での計算のみで,正解が選択肢から正しく選択できるという出題のされ方は,実は「物理」の試行調査の1回目(2017年)でもあったのはご存知か。よって,以下の数値計算では,大体の値を使用して説明することにしよう。有効数字にもコダワラナイよん。
問1)“t=0[s]から t=20[s]の間,等加速度直線運動をしているとみなしたとき”なので,まずは,直線でフィッティングをする。そして,その直線上で好きな値を利用して加速度を求めればよい。たとえば,(0[s],0[m/s])と,(20[s],16[m/s])を使ったとすれば,a = Δv/Δt = (16−0)/(20−0) = 0.8[m/s]。Bが正解。【易】
問2)図1の v-tグラフ からA駅からB駅までの距離を求める問題である。距離は,v-tグラフ における t軸と囲まれた部分の面積 で求まる。概算でよいようなので,思い切って,図1を,おおざっぱにデカい1つの三角形とみなしてしまおうではないかっ(笑)! しっかりと計算するのなら,傾きが4つの領域で違うことから,0[s]〜20[s],20[s]〜38[s],38[s]〜70[s],70[s]〜85[s]の各領域で,分けて考えるのだが,次のような三角形と思って計算してしまおう(笑)! そう,(0,0)→(40,25)→(85,0)というデカい1つの三角形として! ……あ,ちょっと横着しすぎですか(笑)? でも,このデカい1つの三角形の面積を計算すると,(1/2) × 85 × 25 = 1062.5[m]となるので,最も近い選択肢として,Aの 1100[m]を選択できるのだ。よって,Aが正解。もちろん時間があれば,先に述べた4つの領域に分けて,三角形と台形の面積を足し合わせて求めればよいが,時間がかかることは間違いない。【普通】
問3)ここで,いきなりモーターの消費した電力量を求める問題である。一見,力学の問題でありながら,電気の設問を入れてくるところに,出題者の工夫を感じた。とはいえ,図2より,t=0[s]から t=20[s]の間は,モーターに流れた電流値は,I=550[A]で一定であると読み取れる。よって,消費した電力量は,W = VIt = 600×550×(20−0) = 66000000 ≒ 7×106[J]。Eが正解。有効数字は1桁だ。掛け算の結果の0の数を間違えてしまう計算間違いだったり,電力量が W=VIt で求まることを忘れていたら,正解へたどり着けない。【普通】
問4)問題文にもあるように,力学的エネルギー保存則の問題。図1から,t=40[s]のときと,t=60[s]のときのそれぞれの速さを読み取ると,t=40[s]のときは 20[m/s],t=60[s]のときは 14[m/s]と読み取れる。遅くなっていることから,このときの電車は,勾配のある線路上を登って,より高い位置へ移動していることがわかる。この 20[s]間で失った運動エネルギーは,ΔE = E(40[s]) − E(60[s]) = (1/2・m×20^2) − (1/2・m×14^2)= (20^2−14^2)/2 ・ m = (400−196)/2 ・ m = 102m[J]となり,求める高低差を h[m]とすると,力学的エネルギー保存則により,失った運動エネルギーの分が,重力の位置エネルギーとなったわけなので,102m =mgh より,h = 102/g =102/9.8 =10.40… ≒ 10[m]。Bが正解。このように,文字のままで計算できるところは,最後まで文字にして計算していくことで,時間をかけないで求められる。ここでは,途中で消去できた,問題文に与えられていた車両全体の質量である m = 3.0×10^4[kg]は使用しなかった。【やや難】



以上。



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