2019年度 大学入試センター試験 「物理」の講評&説明


2019年02月02日更新


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2019年度 大学入試センター試験 「物理」の講評&説明

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[全体講評]

 センター試験の「物理」,実施5年目である。すでにご承知かとは思うが,2020年度より,大学入試センター試験が廃止され,その代わりのような位置づけで,「大学入学共通テスト」がはじまることになっている。つまり,来年度がセンター試験は最後となる。
 昨年度と今年度の大きな違いは,部分点のあるなしだろう。昨年度は部分点のある問題が6題あったのだが,今年度は1題もなかった。ちなみに,一昨年度も部分点のある問題は1題もなかった。
 今年度は,熱力学と原子分野が選択問題だった。過去2年間は熱力学が必答だったのだが,今年度は選択問題となった。また,これまでと同じく,原子分野を選択しなければ,教科書の全分野をマスターしている必要はなく,従来のように,学校によっては,原子分野の扱いを最低限にとどめるような指導でも十分に対応できた。新課程の物理としての5年目であるが,あいかわらず原子分野は選択問題になっているので,高校現場で原子分野の扱いが,おろそかになってしまう,もしくは,扱うことすらなされないのではないかと懸念している。ただ,2020年度より始まる「大学入学共通テスト」においては,選択問題は作らないということが現在考えられているようなので,現在の高校1年生には,原子物理学までしっかりと学習していただきたいものである。
 今年度の問題で,解いていて気になった問題を挙げてみる。
 第1問の問3の凸レンズの問題。倍率からレンズと物体までの距離,レンズと像までの距離を求め,そこから焦点距離を導くという,目新しい問題だった。よく問題を読み,シチュエーションが理解できたかで,正解にたどり着けるかが分かれそうだ。ただ,与えられた図から,何も考えなくても求まるっちゃー求まるのだが(笑)。
 第2問のBは,よく見かける一様磁場を横切る導体棒の電磁誘導の問題なのだが,問4では抵抗Rが余分についているだけで,一気に難易度の高い問題となっている。電磁誘導の知識のほかに,キルヒホッフの第2法則も使用しないと正答が得られない,かなり難易度の高い問題だったと感じた。大学入試センター試験レベルとはいいがたい出題だったろう。
 第3問Bの問3では,単振動の式が出題されていた。しかも,初期位相がある場合だった。単振動や波の式を苦手とする受験生は多いので,おそらく差がついた問題の一つだったと思われる。
 第4問のBにも言及しておこう。問3では運動エネルギーと角度との関係のグラフという,これまであまり見たことのないグラフの選択の問題であった。問4は,振り子の問題でよくあるエネルギー保存則だけでは解けず,円運動としても考えなくてはならないことに気が付くかで正答へたどり着けるかが決まっただろう。ただ,よく問題文を読むと,“円運動”というヒントの言葉が書いてあるのだが……。
 選択問題ではあるのだが,第6問のX線の発生に関する問題も注目したい。問3は,教科書や問題集等でよく見かけるX線の波長ごとの強度分布のグラフであるが,ターゲット金属の種類を変えるとどうなるか,および,加速電圧を変えるとどうなるかが理解できていないと正答が得られない良問だったと思う。



[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1は運動エネルギーと運動量の違いが理解できているかというのを問う問題,問2は電場が0になるための点電荷の電気量を求まるという教科書例題レベルの問題,問3は凸レンズの焦点距離を求める問題だが,出題方法が珍しい。問4はシリンダーとピストンの縦置きバージョンの,教科書傍用問題集などでは,標準例題で必ず見かける典型的な問題。そして,問5は単振動という現象が理解できていれば,秒殺の問題だった。
問1)運動エネルギーと運動量の違いが理解できているかを問う良問だと感じた。受験生は,こういった文章での説明文での正誤判定が実に苦手である。順に見ていこう。【普通】
  @運動エネルギーは,大きさのみのスカラーだ。
  Aは正しい。ちなみに,二つの小球が(完全)弾性衝突をする場合のみ,運動量も運動エネルギーも保存される。
  B力を受けて物体の速度が変化したとき,運動エネルギーの変化は,物体が受けた“仕事”に等しい。
  C等速円運動する物体の運動量は一定ではない。運動量は向きと大きさをもつベクトルなので,向きが一定ではないからだ。ちなみに,等速直線運動する物体の運動量であれば一定である。
問2)任意の位置の電場は,その位置に+1[C]の大きさの点電荷を置いて,受ける力の向きと大きさ E=k0Q/r^2 として求める。ここでは,x=2d の位置に+1[C]の大きさの点電荷を置いて,x=0 の電気量 Q から受ける力から求められる電場と,x=d の電気量 q から受ける力から求められる電場をそれぞれ求め,合成して 0 になるように式を立てる。
 EQ+Eq = k0Q/(2d)^2 + k0q/(2d-d)^2 = 0
これより,Q=-4q。Eが正解。【普通】
問3)凸レンズの問題。レンズから物体までの距離 a と,レンズから像までの距離 b が,倍率 1.0 という情報から見抜けるかが問われた問題。倍率から a や b を見抜くという問題は,見かけたことがない出題だったと思った。倍率 1.0(b/a=1.0)より,a=b=0.50[m]とわかるので,凸レンズの式に代入して焦点距離を求める。1/a+1/b =1/0.50 + 1/0.50 = 1/f。求める焦点距離は,f=1/4=0.25[m] (←ア)である。また,凸レンズの場合の実像は,倒立実像であるため,像は上下左右がそれぞれひっくり返るから,図3の(A)(←イ)のように見える。@が正解。【普通】
問4)シリンダーを垂直に縦置きした場合の典型的な問題。ピストンが静止していることから,力のつりあいの式を立てる。 。一方,シリンダー内の理想気体についての状態方程式(pV=nRT)より,p=nRT/V=nRT/Sh。先に立てた力のつりあいの式と連立すれば,求めるピストン下面までの高さは,h=nRT/(p0S+mg) となる。Dが正解。【普通】
問5)“単振動”という現象が理解できていれば,秒殺の問題だ。単振動という現象は,力のつりあっている位置を振動の中心として1次元方向に振動するものである。このとき,力がつりあっている振動中心の位置を基準に考えると,単振動していれば,縦置きだろうが横置きだろうが斜め置きだろうがいつも同じ周期 T=2π√m/k となる。よって,(a)〜(c)のいずれの場合でも周期は同じだ。Cが正解。【易】
ちなみに,水平面もしくは斜面に摩擦があると,だんだん振幅が小さくなる減衰振動となる。それは単振動とはいわない。

第2問
 Aは,ダイオードのある回路を交流電源につないだ場合の問題。定性的な問題であるので,ダイオードがあるけれども,特に難易度は高くない。また,問題文中にダイオードの電流の流れる向きまで説明されている親切設計だった。Bは,よく見かける一様磁場を横切る導体棒の電磁誘導の問題なのだが,問4では,抵抗Rが余分についているために,非常に難易度の高い問題となっている。大学入試センター試験レベルにはふさわしくない,かなり難易度の高い問題だった。ちなみに,教科書傍用問題集をいくつか見てみたが,発展問題に類題が見掛けられたのが若干あったのみだった。

問1)AからBの向きが順方向なので,Aがp型半導体,Bがn型半導体だとわかる。p型半導体とはpositive型のことで,キャリアはホール(正孔)である。一方,n型半導体とはnegative型のことで,キャリアは電子だ。以上により,Bが正解。単なる知識問題である。【易】
問2)ダイオードの入った交流回路の問題。定性的な問題なので,抵抗が並列につながっていてややこしそうだが,比較的容易に正答へたどり着けるだろう。ダイオードがなければ,抵抗は並列つなぎであるので,図2の上の抵抗に流れる電流値も,下の抵抗に流れる電流値も同じ大きさとなる(抵抗の両端の電圧が共通なので)。ここに下の抵抗にだけダイオードがあるため,A→Bの向きでは電流が流れるが,B→Aの向きには電流が流れないことになる。つまり,a→bの向きに電流の流れるときは,点Pを流れる電流は上下の抵抗に流れる電流の和となり,b→aの向きに電流が流れるときは,上の抵抗に流れる電流だけが点Pを流れる電流となる。よって,Dが正解。【普通】

問3)一様磁場 B 中に電流が流れているので,図4の場合は,右向きにローレンツ力を受ける。ここでは,それとつりあう左向きの力の大きさを求めるのだが,当然,右向きのローレンツ力の大きさと同じである。ローレンツ力は,F=lIB で求まる。いま,Sを閉じたときの閉回路として,キルヒホッフの第2法則を考えると,V−rI=0 である。よって,求める左向きの力の大きさであるローレンツ力の大きさは,F=VBl/r。Aが正解。【普通】
問4)“十分に時間が経過した後,導体棒に電流は流れなくなり,導体棒の速さは一定値vとなった”という状況である。当然,スイッチ S は接続された状態である。一見,よく見かける2本のレール上をすべる導体棒の問題に見えるのだが,回路に抵抗 R がたった一つあるだけで,発展問題レベルに跳ね上がっている。僕自身が問題を解いていて,これが大学入試センター試験レベルなのか?? と思わず叫んでしまった問題だった。
まず,導体棒が一定の速さ v で右向きに動いていることより,導体棒には誘導起電力 V' = ΔΦ/Δt = BΔS/Δt = Blv/1 = Blv が生じている。つぎに,電流を考える。電池Vの右の導体棒を含む閉回路には電流は流れていない。一方,電池Vの左の抵抗Rを含む閉回路には電流が流れている(その値を i としよう)。それぞれの閉回路において,キルヒホッフの第2法則を適用すると,
電池Vの右の閉回路: V−ri-V' = 0 ……@
電池Vの左の閉回路: V−ri−Ri = 0 ……A
Aより,i=V/(r+R)。@に V' とともに代入して整理すると,v = VR/Bl(r+R)。Dが正解。【難】
たった一つの電気抵抗のせいでの難問であった。そういえば,昨年度の電気回路の問題も難しかったような記憶があるな……。

第3問
 Aは,光の屈折の問題。定性的に出題されているので,作図により簡単に正答が得られた。Bは,単振動とドップラー効果を組み合わせた複合問題。問3では,単振動の式が問われており,苦手とする受験生が多いだろうから,差がついたと思う。問4は,単振動とドップラー効果のどちらもが定性的に理解できていれば正答へたどり着けただろう。

問1)薄膜干渉の典型的な図が図1に与えられた。ただし,薄膜の下がガラス板になっている点に注意。
[1]は,屈折率の定義を問われている問題。n=λ/λ' である。図1のABおよびEFは,波面が同じであるので,同じ波数であるから,n=EF/AB。@が正解。【易】
[2]は,観測者に届く光が強め合う条件を求める。経路1は,Dの反射で位相が逆転する。経路2は,Fの反射で位相が逆転する。結局,観測者の位置では,光路差 ΔL=mλ が強め合う条件となる。経路1と経路2の光路差は,B→D→Fの距離分であり,その間は屈折率 n の薄膜中であるから,その光路差(光学的距離の差)は,ΔL=n(BD+DF)。よって,求める光が強め合う条件は,ΔL=n(BD+DF)=mλ 。Bが正解。薄膜の下のガラス板の存在を忘れると,位相の逆転を見誤り,Cを選んでしまう。【普通】
問2)図2より,透明な板と空気中との境界面での屈折角度の関係を,そのまま図3において当てはめるだけの問題である。また,観測者からの見え方は,目に入る光の光線を延長するだけである。
“姉の目から弟の目へ向かう光は,壁の中を[ア:C→D]の経路に沿って進む”。これは,原始的ではあるが,問題用紙を右や左に回転させて,図2と同じように透明な壁の位置が下側に来るようにして光の道筋を考えれば,間違えることは考えにくい。また,“弟から見た姉の目の位置は,壁のないときと比べて[イ:上にずれて]見え”,“姉から見た弟の目の位置は,壁のないときと比べて[ウ:下にずれて]見える”。Aが正解。それぞれの目に入る光線を延長すればよいだけだ。サービス問題以外何物でもないと感じられた。【易】

問3)水平方向の単振動を式で表すという問題。振幅 a,周期 T の単振動なので,x = a sin(2πt/T) である。ただ,図5を見ると,t=0 において x=0 ではない。つまり,初期位相がある場合である。初期位相をδとすると,x = a sin(2πt/T+δ) とかける。B,C,D,Eのいずれかが正解となる。ここで,δのもっとも簡単な求め方は,t=0 において x=a となるようにすればよい。結果,Cの x = a sin(2πt/T+π/2) が正解とわかる。単振動の式でかつ,初期位相のある場合なので,苦手とする受験生は正答にたどり着けなかった可能性が高い。【普通】
問4)ドップラー効果の問題であるが,単振動と結びつけて考えるという少々欲張った問題。ただ,定性的に考える問題であるので,それぞれの現象を理解していれば正答へたどり着けただろう。まず,ドップラー効果において,音源が観測者に近づいたり遠ざかったりする場合,最も高い音として観測されるのは,音源が観測者に最も速く近づいているときであある。では,図4の音源の単振動において,観測者に最も速い速度で近づいている瞬間はどこかというと,x の正の向きに最大の速度になるところであるから,振動中心の位置を右向き(x の正の向き)に通過する瞬間である。図5のグラフではその瞬間は,Rにあたる。よってBが正解。【やや易】

第4問
 Aは,慣性力に関する教科書例題レベルの問題。確実に得点を得たい問題だ。Bは,よく見かけるタイプの振り子の問題。ただ,問3では,運動エネルギーと角度の関係を表すグラフなどという,あまり見かけたことのないグラフの選択問題であったし,問4では,力学的エネルギー保存則だけでは正答が導けず,円運動の運動方程式も必要となるという,よく見かける図ではあるが,正答にたどり着くのが大変かもしれない出題であった。

問1)おもりのほうに,重力と,慣性力(加速度の向きと逆向きの,電車の進行方向に ma)の力の矢印をかく。その合力の向きが角度θの向きである。tanθ=ma/mg=a/g。Bが正解。【易】
問2)問1の合力の向きが,電車内の見かけの重力の向きである。つまり,電車内では,重力が角度θの右下方向にはたらいていると考えればよい。少年がその電車内にてボールを静かに放せば,見かけの重力の向きに一直線に自由落下する。Dが正解。ちなみに,グラフの角度は当然θである。【易】

問3)図2の角度αのときの小球の絵の位置(質量mとかかれている位置)で,小球の運動エネルギーを考えよう。糸につながれた振り子であるから,糸の張力は仕事をしないので,力学的エネルギー保存則が成り立つ。よって,[小球の運動エネルギーK]=[点Pでの重力の位置エネルギー]―[角度 の位置の小球の重力の位置エネルギー] として,Kが求められる。ちなみに,点Rの重力の位置エネルギーを基準にしている。
 K = mgl−mg(l−lsinα) = mgl sinα ∝ sinα
つまり,K は sinαに比例することが分かる。よって,Dのグラフが正解となる。【普通】
問4)小球が点Rを通過後 β=90°となった位置での小球の速さを v とすると,
 力学的エネルギー保存則より,mgl = 1/2・mv^2 + mg(l-a)。
“小球が最下点Rを通る瞬間に糸が釘にかかり,小球は点Qを中心とする円運動を始める”という問題文のヒントなどから,β=90°となった位置で,円運動の運動方程式を立てる。ちょうどその瞬間は,糸の張力 T のみが向心力となっているので,
 円運動の運動方程式は,mv^2/(l-a) = T。
これらを連立して整理すると,T = 2amg/(l-a) が求まる。Eが正解。円運動の運動方程式を立てるということに気がつかなかった受験生は,正答までたどり着けなかったに違いない。【やや難】

第5問(選択問題)
 第6問と選択の問題。熱力学の問題。p−Vグラフが与えられており,それをもとにして問題が出題されている。
問1)単原子分子理想気体であるので,各状態で理想気体の状態方程式(pV=nRT)を立てることができる。先に,A〜Dの各状態での状態方程式を立て,それぞれの状態での温度を求めておくことにしよう。
 状態A: p0V0=nRTA → TA=p0V0/nR
 状態B: 2p0V0=nRTB → TB=2p0V0/nR=2TA
 状態C: 2p0×3V0=nRTC → TC=6p0V0/nR=6TA
 状態D: p0×3V0=nRTD → TD=3p0V0/nR=3TA
過程A→Bでは,定積変化であるから,外部との仕事のやり取りはない。熱力学第一法則より,ΔQ=ΔU である。単原子分子理想気体の内部エネルギーは,U=3/2・nRT であるから,過程A→Bで,内部エネルギーは,ΔU = 3/2・nRTB − 3/2・nRTA = 3/2・nRTA だけ[イ:増加する]。熱力学第一法則により,増加した内部エネルギーは,気体が熱を[ア:外部から吸収し]たことが分かる。ちなみに吸収した熱量は, である。【普通】
問2)過程A→B→C→D→Aの間に,気体が外部にした仕事の総和は,p−Vグラフにおいて,グラフの囲まれた部分の面積に等しい。図1からわかるように,長方形の面積となる。(2p0−p0)×(3V0−V0)=2p0V0。よって,Bが正解。【易】
問3)p−Tグラフは,すでに問1にて,各状態の温度を の何倍になっているかとして求めているので,たちどころにEが正解とわかるだろう。ちなみに,定積変化はp−Tグラフ上では,T軸と平行となる。また,定圧変化はp−Tグラフ上では,原点を通る比例のグラフとなる。【普通】

第6問(選択問題)
 第5問と選択の問題。X線の発生に関する問題。問3は,教科書や問題集等でよく見かけるX線の波長ごとの強度分布のグラフであるが,ターゲット金属の種類を変えるとどうなるか,および,加速電圧を変えるとどうなるかが理解できていないと正答が得られない良問だった。受験生にとっては,重箱の隅をつつかれた印象があるかもしれない……。
問1)電子についてのエネルギー保存則を考える。加速電圧Vにより,電子は陰極から飛び出した瞬間,電気的位置エネルギー eV をもっている。陽極のターゲットに衝突する瞬間には,そのエネルギーがすべて運動エネルギーになるので,E=eV(←ア)。また,陽極から出るX線の最大エネルギーは E に等しい。よって,X線の振動数の最大値 ν0 は,ν0=E/h より, (←イ)である。@が正解。【普通】
問2)ターゲットから飛び出すX線の,波長ごとの強度分布のグラフにおける鋭いピーク部分は,[ウ:特性(固有)X線]という。この特性X線の仕組みは,図3に従えば,より外側の軌道にある電子(エネルギー準位 E1)が,内側の空いている軌道(エネルギー準位 E0)に落ち込む際に放出されるX線である。もっとも,いつも E1 から E0 とは限らないが。
このとき放出されるX線のエネルギーは,エネルギー準位差と等しくなるので,EX = E1−E0(←エ)となる。Aが正解。【易】
問3)まず,加速電圧 V と最短波長 λ0 の関係について。eV = hν0 = hc/λ0 であるから,λ0 = hc/eV ∝ 1/V であり,最短波長 λ0 は加速電圧 V に反比例することが分かる。つまり,同じ加速電圧を用いると,同じ最短波長となるので,そのスペクトルは(B)と(C)とわかる(←オ)。
次に,同じ陽極金属をターゲットとして用いると,特性(固有)X線は,金属材質に固有のものであるので,まったく同じ波長にあらわれる。同じ波長で特性X線があらわれているのはスペクトルは(A)と(B)とわかる(←カ)。
以上により,Dが正解。ターゲット金属の種類を変えるとどうなるか,および,加速電圧を変えるとどうなるかがしっかり理解できていないと,正答が導けなかったと考えられる。実に,良問だ。【普通】


以上。



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