2016年度 大学入試センター試験 「物理基礎」の講評&説


2016年01月17日更新


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2016年度 大学入試センター試験 「物理基礎」の講評&説明

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[全体講評]

 わずか30分、新課程の物理基礎の2年目である。昨年の問題が、非常に易しかった印象だけに、今年度は、問題の難易度がどうなるかと非常に楽しみにしていた。
 実際の問題は、やはり、易しい問題ばかりであり、差がつくような引っ掛け問題等はほとんどないという印象だった。教科書の問や、傍用問題集の基本問題レベルの問題が多かったように感じる。昨年度よりも、計算問題が少なくなったように感じたし、体感的には、・・・易しくなったかもしれないな。
 参考になるかわからないが、僕が解いた時間は、第1問で3分。第2問で3分。第3問で4分。合計10分だった。あれ? 試験時間は30分ではなかったかな?
 問題を見てみると、計算問題がほとんどなく、あってもきれいに割り切れたりと、数値計算で苦労することはなかった。差がつくと思われるむずかしそうな問題は、第1問の問3の圧力の問題。第2問Bの問4の送電の常識的問題。受験生には常識ではなかったかもしれない。
 全体を通してみると、今年度は上の2問程度しか標準問題といえるようなものはなく、50点満点も多く出たのではないかと思われる。2年連続でこのレベルであるため、今後も教科書の基本問題や、定期考査レベルの、基本的な問題が出題されると見てよかろう。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に、力の合力、エネルギーの変換、圧力、波形の自由端での反射波の合成波作図、エネルギー保存則である。計算問題が少なく、特に問5においては、文章をよく読めば、これが電磁誘導による渦電流が銅パイプに発生するという現象だということなど知らなくても解ける。差がつくとしたら、問3の圧力くらいか。受験生の多くは圧力が苦手なのである。
問1)定期テストレベルの合力の作図問題。Fx、Fyとそれぞれの成分を答えるだけでよく、三平方の定理さえも使用しない。【易】
問2)これは、高校入試でも見かけるレベルの問題だ。教科書では、熱の分野の最後にエネルギーの変換として図でかかれているものだ。【易】
問3)圧力の問題。受験生はこういう問題に弱い。コップ内に持ち上がっているhの高さまでの水の分をきちんと圧力に変換できるかが問われている。水の質量がρShであるから、その圧力は、ρShg/S=ρgh。よって、大気圧は、P0=P+ρgh となる。【普通】
問4)これまた定期考査レベルの問題。自由端での反射は、山が山として反射するのだから、作図ではペタンと端でひっくり返せばよい。しかし、現実にこんな変な波形など普通はないと思うのだが。現実離れした波形を出題する、そちらのほうが気になるのだが。【易】
問5)ガラスには電磁誘導が生じないから渦電流は生じない。一方、銅には電磁誘導で渦電流が生じる。電流が流れることでジュール熱が発生するため、磁石のもつ運動エネルギーの一部が失われる。つまり、落下速度が遅くなる。一見難しそうに見えるが、文章を読めばたやすく正解にたどり着けたと思う。【易】

第2問
 Aは、縦波の横波表現の問題。Bは、変圧器の典型問題と、送電の常識的問題であった。

問1)縦波の横波表現であるが、図より波長λ=4[m]とわかる。波の速さv=340[m/s]は、問題に書いてあるため、波の基本式 v=fλ より、求める振動数は、f=v/λ=340/4=85[Hz]。計算も容易だった。【易】
問2)縦波の横波表現は、授業でも必ず行うはずで、こういった、横波表現のグラフから縦波に変換したときの疎密の位置を問われるのは、定期考査レベル。変位が正からから負になっているところが密の位置だ。【易】

問3)交流におけるトランス(変圧器)の式 V1/V2=N1/N2 より、たちどころに求まる。コイルの巻き数と電圧は比例するのだった。【易】
問4)消費電力はP=VI=RI^2=V^2/R である。なので、イは、RI^2 も V^2/R もどちらも正しそうなのだが、“送電線で消費される電力”という条件がついているので、ここでは、RI^2 のみが正解となる。送電では、6万6千ボルト(または3万3千ボルト)で発電所で発電した電気を、少しづつ降圧して、需要家へと届ける。なぜなら、消費電力は P=RI^2 であるから、送電線に流れる電流が大きいほど、送電線での電力損失は大きくなってしまう。発電できる電力が同じであるなら、P=VI の関係より、Vを大きく(高電圧)にすると、Iが小さく(小電流)てすむため、送電線での電力損失を少なくすることができるわけだ。これは送電の問題であるが、常識なのではないだろうか。【普通】

第3問
 Aは、力学的エネルギー保存則のもっともポピュラーな問題。Bは鉛直投げ上げ運動の定期考査レベルの基本問題。どちらも素直な問題であり、容易に正解が導かれただろう。

問1)ばねを縮めているときに小物体がもっている、ばねの弾性力による位置エネルギーは、U=1/2kx^2 である。小物体が水平面を速さvで運動しているときにもっている運動エネルギーは、K=1/2mv^2 である。いま、面がなめらかなので、力学的エネルギー保存則より、U=K すなわち、1/2kx^2 = 1/2mv^2。よって、求める速さは、v=√(k/m)x。【易】
問2)小物体が水平面から高さhのところでもっている重力による位置エネルギーは、U=mgh であるから、力学的エネルギー保存則より、K=U すなわち、1/2mv^2 = mgh。よって、求める高さは、h=v^2/2g となる。【易】

問3)鉛直投げ上げ運動は座標軸は鉛直上向きを正にする。等加速度直線運動の速度の公式(v=v0+at)より、鉛直投げ運動の最高点では v=0 となることを思い出せば、0=v0-gt1 である。よって、t1=v0/g。【易】
問4)等加速度直線運動の位置の公式(x=v0t+1/at^2)より、y=v0t-1/2gt^2 となる。このグラフは、上に凸の2次関数のグラフであるから、Cが正解とわかる。また、この式を整理すると、y=-1/2gt^2+v0t=-t(gt/2-v0) となるから、y=0 となるのは、t=0,2v0/g とわかる。つまり、t2=2v0/g=2t1 である。これは、鉛直投げ上げ運動の対称性を示していることもわかる。【易】


以上。



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