2015年度 大学入試センター試験 「物理基礎」の講評&説


2015年01月18日更新


数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2015年度 大学入試センター試験 「物理基礎」の講評&説明

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[全体講評]

 わずか30分、新課程の物理基礎はどんな問題が出題されるのだろうと、非常に心待ちにしていたのだが、思った以上に容易な問題ばかりで、計算量も少なく、中学校の知識でもいけるんじゃないか? という程度の問題もあった。ひねくれた出題もほとんどなく、もしかしたら、定期考査の問題よりもやさしかったかもしれない。大判の教科書での学習で充分だと思う。これは、過去の例のように、新課程になった始めての年なので、様子見でやさしかったと考えるのがよいのかもしれない。満点の50点が取れる受験生も多かったと思われる。
 また、物理基礎の教科書の最後の部分まで第1問の問5で問われてはいるのだが、もはや現代の日本では常識となっているようなレベルの知識問題であったため、教科書が最後まで終わらなかったということがあっても、今年の問題では救われた。これは、きちんと最後の分野まで出すぞという、大学入試センターのアピールだと受け取れる。
 さらに、部分点のある問題がなかった。昨年、部分点の問題があったので、その傾向が続くかと思われたが、そうはならなかったようだ。
 ちなみに、試験時間は30分だが、僕が解いた時間は、第1問で5分。第2問で8分。第3問で3分。合計16分だった。
 小問集合の第1問は、ザ・基本問題という感じの基本的問題であった。強いて言うなら、問4の弦の問題が【普通】レベルか。
 第2問のAは、波の問題。教科書とか授業と違って、負の方向に動く波であるので、波をよく理解していないと悩むことになったかもしれない。Bは、素直な電気抵抗の直列つなぎと並列つなぎの問題であったが、3つあるので、2つの場合で公式を覚えていた受験生にとっては応用問題に感じたかもしれない。
 少し面白いと感じたのは、第3問のBの問4で、ぱっと見た、見た目にごまかされて、vb>vc>vaという誤答を選んでしまった受験生が多いのではないだろうか。
 全体を通してみると、比較的容易な問題が多く、時間も短いためか計算も煩雑ではなく、内容も基本的な問題が多かった。すこし受験生が悩んだかもしれないのは第3問だろう。公式丸暗記だけでは、第3問の物理現象が正しく理解できない可能性が高いと思われた。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 小問集合。問1から順に、静電気、熱機関の熱効率、等加速度直線運動、弦の振動、原子力発電である。いずれも、基本的内容を問われた問題であり、特にひっかけなどはない。教科書の項目の順ではなかったということ程度か。
問1)静電気の導入の実験で取り上げられるよくある内容。そういえば、教科書では、「斥力」という表記ではなく「反発力」となっているが、いつのまに「斥力」をつかわなくなったのだろうか?【易】
問2)熱機関の熱効率e=外にした仕事W/吸収熱量Q1。また、W=Q1-放出熱量Q2である。【易】
問3)等加速度直線運動の問題。加速度の定義a=Δx/Δt、および、位置を求める公式x=v0t+1/2at^2を用いる問題。計算もたやすい。【易】
問4)110[Hz]のときの弦の振動は、図より基本振動とわかる。張力が一定なら弦を伝わる波の速さも一定なので、振動数を上げていくと、220[Hz]で2倍振動、330[Hz]で3倍振動、・・・となる。題意にあうのは330[Hz]だ。【普通】
問5)原子力発電に関するニュースなどでも取り上げられている。教科書では最後のほうの内容なのだが、まあ、常識レベルであろう。【易】

第2問
 Aは、x軸の負の向きに動く波の問題。Bは、電気抵抗の直列つなぎと並列つなぎの典型問題である。3つ並んでいるのだが、計算はそれほど面倒ではない。

問1)0.2[s」で、-1[m]だけx軸の負の向きに動くことがよみ取れれば、v=Δx/Δt=-1/0.2=-5[m/s]。【易】
問2)波の基本式v=fλ=λ/Tより、T=λ/v=12[m]/5[m/s]=2.4[s]。波長λ=12[m]は、グラフからよみ取れる。【普通】

問3)直列つなぎの(a)の合成抵抗Ra=R1+R2+R3=10+20+40=70[Ω]。PQの電圧VPQが10[V]なので、オームの法則より、Ia=VPQ/Ra=10/70=0.14[A]。並列つなぎの(b)では、どの抵抗にもVPQがかかっているので、オームの法則より、Ib=VPQ/R1=10/10=1.0[A]。【普通】
問4)消費電力はP=VI=RI^2=V^2/R であるから、直列つなぎの(a)では、Iaが共通なので、Pは、抵抗値に比例するから、抵抗値のもっとも大きいR3が消費電力が一番大きいことになる。一方、並列つなぎの(b)では、VPQが共通なので、Pは、抵抗値に反比例するから、抵抗値がもっとも小さいR1が、消費電力が一番大きい。【普通】

第3問
 Aは、ばねに関する問題。ただ、両端を引っ張るというシチュエーションがあまり見かけないので、悩んだ受験生もいたかもしれない。Bの問4は見かけにだまされず、力学的エネルギー保存則をあてはめることができれば容易に正答が導ける。個人的にはこのBの問4は良問だったと思う。

問1)ばねの両端をFで引っ張っている図がかいてあるが、このようなばねの両端への力は、ばねが片端を壁かなんかに固定してあるときとまったく同じである。それに気が付けば、片端を固定したばねをFで引っ張っているのと同じなので、フックの法則F=kxが成り立つ。よって、x=F/kだ。【やや難】
問2)仕事と力学的エネルギーの関係により、引っ張った力のした仕事が、ばねの弾性エネルギーとなってたまるので、W=1/2kx^2である。【普通】

問3)なめらかな斜面を滑り落ちる小物体の運動は、等加速度直線運動になるから、v-tグラフは直線になる。【易】
問4)見た目でひっかかった受験生も多いかもしれない。(a)では斜面に沿って上向きにvで小物体を運動させているのだが、そのあとどうなるか? Pより上のあるところ(最高点)までいくと、折り返して再びPに戻ってくる。そのときの速さは、力学的エネルギー保存則より、同じPの高さなので、斜面に沿って下向きにvとなるはずだ。そう、つまり、(b)と同じになるわけだ。【普通】


以上。



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