2011年度 大学入試センター試験 物理Tの講評&説明


2011年01月17日更新
2011年02月01日修正

数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2011年度 大学入試センター試験 物理Tの講評&説明

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[全体講評]

 今年度の物理Iの問題は、昨年の難化(?)(というか正常化)の延長上にあるのか、オーソドックスな問題であるばかりか、少しづつひねった問題であるように感じた。
 たとえば、例年基礎知識を問う第1問であるが、軽いひねりが加わっており、丸暗記程度の知識では引っかかるような問題だった。こういうのを良問というのだろう。
 特筆すべきは、第4問。なかなかに難度の高い問題の連続で、第4問のAではばねに悩まされ、Bでは糸に悩まされ、Cでは圧力に悩まされる。いずれも受験生の苦手とする部分の出題であるように感じた。
 全体を通してみると、基本公式丸暗記では歯が立たない。しっかりした理解がなされていないと高得点を取るのは難しいのではなかろうか。
 僕個人としては、昨年度よりさらに物理って感じの問題になったので、大歓迎極まりない。今回のセンター試験のようにしっかりと理解していないと高得点が取れないのは大変良い傾向だと思う。受験生の立場からすれば、「丸暗記では物理は点が取れない」そういう時代になった(に戻った)だけの話だ。


[各設問に対するコメント&説明]

第1問
 毎度おなじみの小問集合。レベルは【易】〜【普通】。いずれの問題もどこかで見たような図ではあるものの、少しだけひねってある良問ぞろい。問6など、これまでにあまり見かけなかった新傾向の基本問題か。
問1)固定端では山が谷に、谷が山となる(位相が逆転する)。基本問題。ただ、鏡のように反射すると丸暗記しているとCを選んでしまうかもしれない。ウエーブマシン等で演示実験を見ていれば間違うとは思えない。【易】
問2)力学的エネルギー保存則の基本問題だ。4つも選択肢があるが、90°落ちたときが mgL=(1/2)・mv^2 より、v=√2gL とわかれば、Aと瞬時にわかる。【易】
問3)通常の帯電させたものを近づけるという演示実験とは逆のパターンなので悩んだ受験生もいるかもしれない。ただ、それだけが引っ掛けか?【易】
問4)屈折の法則(スネルの法則)を使う。空気中の音速を v とすれば、水中は 4.5v である。よって、空気中の屈折率 n(空気)=1 なら、水中の屈折率 n(水)=v/4.5v≒0.22 である。よって、1・sinθ(空気)=0.22・sinθ(水)となり、θ(空気)<θ(水)がいえる。よってC。【普通】
問5)ばねが棒を右向きに kx で引っ張っていることに気がつけば、あとは、天井と棒との接点まわりの力のモーメントのつりあいの式を求めればよい。反時計回りを正とするので、(+kxcosθ・L)+(-mg・(L/2)sinθ)=0。【普通】
問6)これはなかなか良い問題だと個人的に思う。順に@F・x=W(仕事の単位は[J])Akx=F(力[N])BVI=P(電力[W])CRI=V(電圧[V])DPS=F(力[N])EC・Δt=Q(熱量[J])【易】

第2問
 電気分野の問題。Aは、非オーム抵抗(非直線抵抗)の典型的な問題。Bは、電磁誘導の問題だが、問4は渦電流の問題であり目新しく、苦戦した受験生がいるかもしれない。まあ、1円玉を通常の1回巻きのコイルだと思えばいいだけの話なのだが。【普通】〜【やや難】

問1)[1]は直列接続なので、2個の電灯とも同じ電圧になる。[2]では、1個に加わる電圧が 50[V] であることから、図1のグラフより電流が 0.45[A] 流れることを見つけ出す。2個の直列につないだ白熱電灯の両端に 100[V] の電圧を加えているので、消費電力は P=VI=100×0.45=45[W] となる。【普通】
問2)白熱電灯を流れる電流をI、そのときの電圧をVとすると、100[Ω]の抵抗の電圧はオームの法則から 100I となる。よって、回路全体の電圧 V’=V+100I となる。たとえば白熱電灯に I=0.4[A] が流れたら、図1より V=40[V] なので、回路全体では、V’=V+100I=40+100×0.4=80[V] となる。それを満たすのはBのみ。【やや難】
【やや難】
問3)[ア]電磁誘導は、レンツの法則より、磁場の変化を打ち消す向きに磁場を作るように電流が流れる。N極がリングに近づくと、リングは図4の左向きに磁場を生むように電流が流れるので誘導電流はAの向きになる。右ねじの法則で求めよう。[イ]近づける速さが大きくなると自足に変化量が大きくなるので誘導電流も大きくなる。これは、ファラデーの電磁誘導の法則である。
問4)渦電流の発生の問題で、あまり見かけない。1円玉をコイル(以下“1円コイル”)だと思って考えればいいだけの話なのだが。[ウ]磁石を上へ動かすと、1円コイルは上向きに磁場を生むように誘導電流が流れる(レンツの法則)。つまり、[エ]1円コイルでは上がN極、下がS極となる。[オ]磁石が上にあるということは磁石の下の極がS。一方で1円コイルの上はN極。よって引力がはたらく。

第3問
 波動の問題。Aは、レンズの問題。Bは干渉の問題だ。【易】〜【やや難?】

問1)凹レンズの基本を問うているだけの問題。ちなみに、凹レンズでは、焦点と物体との位置関係にはよらず、すべての物体がレンズの前方の焦点までに小さくなった虚像としてできる。【易】
問2)図で考えてもいいが、凸レンズの式 1/a + 1/b = 1/f を用いたほうがわかりやすいか? [エ]物体までの距離aが大きくなると、1/a が小さくなり、網膜までの距離 b が変化しなければ、1/f が小さくなるしかない。よって、焦点距離 f は大きくなる。[オ]fが変化できないならば、1/a が小さくなると、1/b が大きくなるしかない。つまり、実像までの距離 b が小さくなる。【普通】

問3)図3は S1 だけなので、単純に圧力の変化の1サイクルが周期を示している。よって、T=2×10-3[s]である。ならば、振動数は、f0=1/T=500[Hz]。波の基本公式 v=f0λ より、λ=v/f0=340/500=0.68[m]。【普通】
問4)干渉の弱めあう条件。同位相なら半波長ずれた場合なので、Δl=mλ+1/2・λ=(m+1/2)λ。基本問題。【易】
問5)[カ]S1 と S2 が同位相なら、図2と同じ状態になるのでP点は弱めあう。【易】。[キ][ク]次に振動数を2倍にすると、f0→2f0 なので、音速vが一定だから、v=2f0λ’となり、波長λ’=v/2f0=λ/2 と半分になる。つまり、波長が半波長ずれることになるので、強めあう条件と弱めあう条件が入れ替わることとなる。しっかり式で考えないと引っかかりそうな問題だ。【やや難?】


第4問
 Aは、ばねを用いた力学の問題。Bは摩擦のある面での糸につながれた2物体の問題。Cは、熱力学や圧力についての問題。いずれもかなり難度が高い。【普通】〜【難】

問1)おもりA1とA2についてそれぞれ運動方程式を立てよう。A1:kx1=mg+kx2。A2:kx2=Mg。これらを連立。【普通】
問2)ばねを切り離した瞬間と、おもりA1が自然長に来た瞬間で力学的エネルギー保存則を立てるのがよかろう。自然長の位置を位置エネルギーの基準とすると、力学的エネルギー保存則は、1/2・k(x1)^2 - mgx1 =1/2・m(v)^2。これを解けばよい。【やや難】

問3)AとBが一定の速さで動いているとのことなので、AもBも力がつりあっている。これに気がつかないと力のつりあいの式が立てられない。糸の張力を T として、Aについての力の釣り合いの式は、T + μA’Mg = F。Bについては、T = μB’mg。ならば、F =(μA’M + μB’m)g。【難?】
問4)Aに加え力を加えるのをやめたところ、糸がたるんだとあるので、AとBの間の張力 T=0 となる。右向きを正とすると、Aは、aA=-μA’g の加速度で減速し、Bは、aB=-μB’g の加速度で減速する。糸がたるむということは、aA>aB であるから、μA’>μB’ となる。次に、静止するまでの時間は、位置の公式(v=v0+at)を使って、Aなら、0=V-aA・tA なので、tA=v/μA’g。Bは、tB=v/μB’g。よって、μA’>μB’ならば、tA<tB となる。【難】

問5)これは熱力学の問題。圧力が一定の場合の変化なので、シャルルの法則(V/T=一定)を用いる。V0/(15+273) = V/(43+273)。よって、V/V0 = 316/288 = 1.097・・・。【普通】
問6)持ちあげているのは、水面より上にある水と円筒。つまり、円筒の重力 Mg と、高さ h の分の水の質量 ρVg = ρShg( V = Sh)を合わせた分だけ。よって、答えは、Mg + ρghS の@となる。ただ、こういった水が絡む問題は不得意な受験生が多いと予想される。【普通】


以上。


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