2010年度 大学入試センター試験 物理Tの講評&説明


2010年01月18日更新

数式がテキスト形式のファイルで作られているので見にくくて申し訳ない!


2010年度 大学入試センター試験 物理Tの講評&説明

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[全体講評]

 今年度の物理Tの問題は、どこかで見たことのあるような図ばかりで、例年のように、身近な現象と結びつけたような、受験生を悩ませる出題が減った。
 よって、しっかり演習問題をこなしていれば、どこかで見たことがあるような図なので、落ち着いて問題に取り組めたと思う。
 ただ、第3問Aのように、計算量が大変多いものや、第5問の問6の加速度(しかもバネの縮むときの加速度)の変化をグラフで読み取る問題など、一筋縄ではいかない問題も含まれている。
 全体を通してみると、基本だけではなく、引っかけにひっかからない文章理解力や、文字の複雑な計算力も問われたように感じた。
 まあ、個人的な感想では、物理らしい問題になったので、昨年までの見てすぐ解ける物理では無いという傾向が今年から始まったのならば、大歓迎というところである。


[各設問に対するコメント&説明]

 第1問
  小問集合。基本事項の確認問題。レベルは【易】〜【普通】。問3の波のグラフ変換は苦手な受験生も多いのではないか。
 問1)バネの弾性力の大きさは F=kx。基本問題。【易】
 問2)直線電流の周りにできる磁場 H=I/2πr。ちなみに、正解の@のみ誘導起電力がうまれるが、A〜Cは発生しない。【易】
 問3)苦手な受験生が多いと思われる。差のつく問題? 判定方法は、1、x軸方向に波を少しずらす。すると、位置 x=15[m] の点が次に上に動くことがわかる。また、v=fλ より、f=20/40=0.5[Hz]。よって、周期 T=1/f=2.0[s]。【普通】
 問4)力のモーメントのつりあい。支点は B がいいだろう。l1/2・Mg=xmg。【易】
 問5)1[g]の水を1[℃]上昇させるのに必要なエネルギーは、4.2[J]なので、360[g]の水を14[℃]から94[℃]まで上昇させるのに必要なエネルギーは、(80X4.2)X360[J]。これが3分間=180[s]なので、(80X4.2)X360/180=672[W]が水の温度上昇に使われた。【普通】
 問6)弦の振動の基本問題。v=f0・2L および、v=fL である。弦を伝わる波の速さ v は共通。【易】

 第2問
  電気分野の問題。Bでは、電池の内部抵抗について問われたが、回路図を見ればたぶんできたと思う。
 A【易】
 問1)トランス(変圧器)の基本問題。n2/n2=V2/V1。
 問2)身近な話題として授業でもよく触れられると思う問題。V=RI のオームの法則の問題に過ぎない。抵抗値の R が一定というわけ。
 B【やや難】
 問3)キルヒホッフの第2法則より、回路に流れる電流を I とすると、E-rI-V=0 移項して、V=-rI+E とすると、グラフの傾きが -r で、切片が E となる。
 問4)次のことがわかるかどうか。“スイッチを閉じても検流計がふれなかった”とは、“電池には電流が流れていない”ということ。つまり、内部抵抗 r の両端の電位差は0。

 第3問
  波動の問題。Aは、光に関する屈折の法則を駆使する問題。Bは干渉の問題だ。
 A【やや難】
 問1)全反射が実現した場合が、図1のような光の道筋になると考えると、光のファイバー内の実距離は、L/sinr となる。媒質1中では、光学的距離が n1 倍になるので、ファイバー内の光学的距離は、n1L/sinr。その光学的距離を光速 c ですすむわけなので、n1L/(c・sinr) となる。
 問2)媒質1と媒質2の間で、全反射が起こるのは、屈折の法則より、n1sinr0=n2sin90°の成り立つとき。r0 は臨界角。この式から sinr0=n2/n1 が求まり、三角形の作図によって、cosr0=√(n1^2-n2^2)/n1 となる。一方、空気から光が媒質1に入るときの屈折の法則は、1・sini0=n1sin(90°-ro)=n1cosr0 となる。媒質1へ入った直後の屈折角に注意。あとは、cosr0 を代入すればよい。
 B
 問3)波源AとBが逆位相。よって、強め合う条件は、凅=(m+1/2)λのとき。m=0,1,2,・・・。【易】
 問4)波源AとBが同位相。よって、強め合う条件は、凅=mλのとき。m=0,1,2,・・・。条件に当てはまる強めう経路差が実現するのは、まずは m=0 のとき。θは90°と270°の2つ。次に、m=1 のとき。θは第1象限、第2象限、第3象限、第4象限のそれぞれにひとつずつ。合計4つがある。さらに、m=2 のときも同様に4つ。さらにさらに、m=3 のときも同様に4つ。合計は、2+4X3=14 だ。これは、なかなか難しい問題だったと思われる。【難】

 第4問
  Aは、熱力学の問題。温度一定のボイルの法則と、圧力一定のシャルルの法則を駆使する問題である。Bは力学的エネルギー保存則の問題。Cは、摩擦のからむ典型的な力学の問題だ。
 A【普通】
 問1)ピストンが静止しているので、鉛直方向の力のつりあいの式を立てる。P1S+Mg=P
0S。
 問2)温度が一定なのでボイルの法則。図2(体積V2とする)と図3(体積V3)で、P1V2=P0V3。
 問3)押し縮めたので、B側は断熱圧縮により、内部の温度 TB は上がる(TB>T0)。また、押さえつけているのでB側内部の圧力(PBとする)は、PB>P0 となる。またシリンダはA側とつながっているし、断面積も同じなので、PB=PA(←押さえつけたときのA内部圧力)。よって与えられたグラフより、VB(断熱)>VA(等温)とわかる。
 B
 問4)力学的エネルギー保存則。ばねの縮みを x とすると、(1/2)・mv^2=(1/2)・kx^2。ばねの長さは l-x。【易】
 問5)力学的エネルギー保存則。最高点までの高さを h とすると、(1/2)・mv^2=mgh。【易】
 問6)まずばねまでは等速度(a=0)。ばねを押して縮み始めると、加速度は負の向きに生じる(a<0)。その最大はばねの折り返し点となる。運動方程式をかくと、ma=-kx だが、 x が一定ではないので、等加速度ではない点に注意。ACEが間違い。そして折り返して斜面を登るが、斜面を登る運動は等加速度直線運動。よって、D。ばねの部分の加速度がわかるかで得点差がつきそう。【やや難】
 C
 問7)滑り出す瞬間は、両物体は静止しているので、力のつりあいの式を立てる。Aについては、斜面方向 μN+Mgcosθ1=T、斜面垂直方向 N=Mgsinθ1。Bについては、T=mg。N と T を斜面方向のつりあいの式に代入して整理すれば求まる。【普通】
 問8)仕事と力学的エネルギーの関係を用いて解くのがはやいだろう。0+mg・h-μ'N・h=(1/2)・Mv^2+(1/2)・mv^2。各項の意味は、順に、はじめの全力学的エネルギー(静止=0)+Bが落ちる仕事(正:+mg・h)+Aに働く動摩擦力の仕事(負:-μ'N・h)=あとの全力学的エネルギー(AとBがともに速さ v で運動→運動エネルギーとして)。【普通】


 以上。

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