2004年12月01日 松野聖史
【要旨】
先日、新聞でテレビ朝日系列『ドラえもん』の声優陣総降板の記事を見た。アニメにおけるキャラクターの声当てについていろいろ考察してみた。
【キーワード】
アニメ ドラえもん のび太 ジャイアン スネ夫 しずか 声優
衝撃的な新聞記事『テレビ朝日系列「ドラえもん」の声優陣総降板』を見たのは、半月くらい前だろうか。あまりに驚き、生徒に話したが、「あっそ。」くらいの反応で、さらに驚いた。
新聞によると、2005年3月までが現在の声優陣で、4月から総入れ替えが行われるらしい。25年もドラえもんの声を当てていた、大山のぶ代氏のコメントも載っていたが、そのレジュラー声優陣の高齢化にも驚いた。ほとんどが、70歳近いのである。自分が、生まれて間もない頃から声はずっと同じであったドラえもん。ジャイアン役のたてかべ和也氏などは、70歳。70−25=45歳から、ずっと変わらぬ、音痴な歌を歌いつづけて来たのである。あの有名なジャイアンのテーマソング「♪おーれーはジャイアーン! ガーキ大将!・・・」の歌詞は、たてかべ氏が作ったものであるというのもよく知っていると思う。ちなみに、原作では「ボエー」に該当する歌だ。
次の若い声優陣は、どのような面々になるのだろうか。大変気になるのだが、テレビ朝日も思い切った決断を下したものだ。今までのアニメの中で、同じ番組内で声優が変わっているものは多くある。まず、フジテレビ系の「サザエさん」だ。カツオの声が旧ウキエさんになったときは、(富永み〜な氏)みんな違和感を感じたのか、「カツオの声が変だ変だ!」といっているのを耳にしたものだ。その前にも後にも、色々と変わっている。ノリスケさんも変わっているのだが、なかなか話題にものぼらない。番組内ではないけれど、同じキャラクターがでてくるといつも同じ人が声を当てていたものもある。松本零士の作品だ。とくにキャプテンハーロックとトチローだ。初代は井上真樹夫氏。「ルパン三世」の石川五右ヱ門役で有名だ。トチローは富山氏。氏の死後、2代目トチローは山寺宏一氏。「ゾロリ」や洋映画「マスク」などの役でも有名だ。同キャラクターは、「宇宙海賊キャプテンハーロック」のあと、「無限軌道SSX」、「銀河鉄道999」内、OVA「ハーロックサーガ」、「クイーンエメラルダス」、そして「メーテルレジェンド」「宇宙交響詩メーテル」と随所に登場する。OVA「ハーロックサーガ」で。2代目ハーロックをなんとトチロー役の山寺氏がひとり二役であった。「宇宙交響詩メーテル」では、ハーロック役およびトチロー役が異なり、トチロー役には、「らんま1/2」のらんま役や「名探偵コナン」の工藤真一役で有名な山口勝平氏。このように徐々に変化しているものは、他にもある。NHK教育の「おじゃる丸」のおじゃるは、2代目だ。単なる動いている絵に声を当てることで、アニメは命が吹き込まれ、それで見ているほうもそのキャラクターを受け入れるのだ。声優が変われば当然、キャラクターの雰囲気も変わり、以前のイメージが破壊することもある。かえってよくなる場合もある。たまには、気が付かないことさえある。
実写版でキャストが変わるものは長続きしている時代劇だ。そう、TBSの「水戸黄門」。東野黄門、西村黄門、浅野黄門、石坂黄門、そして現在の里見黄門様へと5代も変わっている。それぞれの代で、周りの俳優も少しづつ変化しているが、なにより、主役で印象が大きく異なっている。石坂黄門の初期はひげがないのだ。しかも、若すぎる。しかし、それはそれで受け入れられた。
アニメで総入れ替えがなされたものは実は存在する。フジテレビ系の「アラレちゃん」だ。10年近く続いた旧「ドクタースランプ」のあと、そのファン層を喜ばせてくれるかと期待した作品だったが、長続きしなかった。声優陣総入れ替え及びキャラクターデザインの一新。デジタルアニメ以降時期でいろいろな試みもなされたが、長続きしなかったというのはファン層に受け入れられなかったということだろう。
国民的長寿アニメの「サザエさん」とはちがう声優入れ替えを「ドラえもん」では行おうとしている。おそらく、キャラクターデザインの一新はないと思われる。一気にのび太もジャイアンもスネ夫もしずかちゃんもみんな声が変わるので、なんとなくさびしい気もする。新しい声優陣がドラえもんをさらに続けてゆきたいのならば、その声優にしかできないドラえもんにするしか道はないと思う。
年配の方々が築いてこられたアニメ「ドラえもん」の世界を、どのように継承してゆくのかが非常に楽しみでもある。
この新聞記事を見ながら考えたことがある。良いものを後世に伝えてゆくことが大切であるということだ。人類の歴史の上でそれはあたりまえのことなのであるが、25年間一度も声優が代わらなかったということは、ある意味ではすばらしいことなのかもしれないが、後継を育てることができなかったという点では非常に残念である。ここ数年、オープニングの歌を「東京プリン」に変えて以来、ドラえもんもオーバーリアクションをするようになったり、昔の作品のリメイクをしてみたりといろいろな取組みがなされてくるようになった。脚本がもとひら了氏から岸間信明氏がメインになっており、大長編も苦労の跡が見える。映画20周年の時には、監督に芝山勉氏が戻って、作品のレベルが上がったように思ったが、最近、また下がってきているようにも感じて残念だ。若いスタッフがドラえもんを十分に生かし切れていないのだろう。シンエイ動画内で何がおこっているのかわからないのだが、ついこの前までは「クレヨンしんちゃん」のほうがアニメとしてのレベルが高かった。とにかく、若手を十分に育てきれていないということをいつも思う。
もっと、後継を育てることに本気にならねばいけない時期がきているのだと思う。これは、アニメの世界ばかりでなく、あらゆる分野でそうなのではないか? そういう点では、教育に携わる僕も、うかうかしてはおれない。
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