定期テストとテスト週間

2004年11月25日 松野聖史

【要旨】
 毎年感じるのだが、なぜ定期テスト前には一週間のテスト週間なるものがあるだろうか。このテスト週間というものは、非常にありがたいように思うのだが、それがかえって生徒に悪影響を与えていると思う。
【キーワード】
 定期テスト テスト週間 一週間 補習 ゆとり 長期休業

 現在の勤務校は、二期制であるため、ちょうど11月の終わりで、後期中間テストである。毎年、毎度、同じことを思うので、ここに書くことにしよう。
 テスト前になると、テスト週間というものが、きまってテスト開始日の一週間前からある。この間は、部活動がなく、職員室への出入りが規制される。自分が中学校のときにもあった。部活動がないので早く帰って、テスト勉強をしたものだ。よく覚えていないが、多分、高校のときにもあったのではないかと思う。しかし、高校でのテスト週間の存在はほとんど頭の中に残っていない。
 なぜ、自分の経験上、高校でのテスト週間の存在が頭に残っていないかというと、おそらく、生徒会活動に没頭しておりロクすっぽ、勉強に力を入れていなかったからだろう。・・・なのか? それもあるかもしれないが、テスト前だけに勉強してもあまり効果的ではないということがわかっていたため、取り分けて、テスト前だけ猛勉強をしたということなどなかったというのも大きい原因なのではないかと思う。高校生の頃は、毎日放課後、1時間、図書館の地下にこもって、古い本の匂いの中、数学の"赤チャート"という数研出版の問題集をやっていた(1年生)。毎日やっているので、テスト前だろうがなんだろうが慌てることもないわけだ。だいたい、高校の勉強の内容は自分にはとてつもなく難しく、毎日少しだけでもやっておくことくらいしか着いてゆく方法を知らなかったこともある。いつも数学ばかりやっていたかというとそうでもなく、地学や生物(理科T)や、古文の文法なども地下の書庫で学んでいた。・・・後日談もある。1年生の後半になって、生徒会活動に積極的になった。オリエンテーション準備実行委員会(ヒラ)や、旭苑編集委員会(ヒラ)、保健委員会委員長など、いろいろ手を出し始め、2年生になってからは、地下の書庫にこもることもなくなった。(要は勉強しなくなったということだ。)しかし、英語が苦手であったし、担任が英語の先生だったため、英語だけは、週に1日土曜日の午後(放課後)丸々つかって、全訳確認とポイントの整理をマンツーマンで教えていただいた。さて、2年生後半。さらに後日談がある。旭苑編集委員会委員長になって、学校に夜遅くまでいるようになり、まさに生徒会にどっぷりつかってしまった。しかし、土曜日の英語はそれでも続いていた。3年生も英語の担当が同じ先生だったため、通算で2年間毎週通ったことになる。3年生のはじめから、予備校というところに通いだした。まぁ、別に成績は上がらなかったのだが、いろいろな友達ができたのがよかった。そのときできた友達とは、いまだにメールのやり取りなどしている。
 あ、話がそれた。大事なことへ戻そうか。つまり、テスト週間には何の意味もないと言いたいのである。むしろ、生徒にとっては悪影響のみかもしれない。どういうことか。つまりこうだ。中学校の勉強内容は、さほど難しくなく、短時間で十分復習できるような内容だったので、テスト前一週間でどうにでもなった経験をもって高校に上がってくる。高校の授業ペースは中学校の比ではないくらいに早いのに、まず、着いていけなくなった時点で、賢い子であれば、「あ、これは、テスト前でどうこうなるものではないな、毎日の復習が大切だ!」と思うところが、「まぁ、テスト前にノートを写させてもらって暗記すれば何とかなるだろう。」と思ってしまう場合もあるのだ。つまり、テスト前にテスト週間がある=テスト勉強はテスト週間にやるものだという図式が生徒の中にできてしまっており、結局、テスト前まで勉強しないことにつながると言えなくはないか?
 高校の授業ペースは非常に早く、授業中に理解できるようなものではないと思う。しかし、生徒はテスト週間があるがため、日々の学習をおろそかにし、テスト前にどうにもならなくなって、結果的に点数も取れずさっぱりわからなくなり、授業についていけないことになる。テスト週間の存在のみがその要因ではないとしても、かなり多くの要因ではないかと考えられないか。
ということで、日々の学習をしっかり高校生に身につけるための方法は、"定期テスト前のテスト週間を廃止する"ことではなかろうか。テスト週間は、生徒のだけのものではなく、教員にとっても大事なのだ。テストを作る時間に使うからである。部活動の指導なりでテスト週間がなくなってしまうと、テスト作成が持ち帰り仕事になってしまう。そういう点では非常に問題があるとは思うが、忙しすぎるのがあたりまえになってしまった教育現場を変え、授業の空き時間を十分に確保し、そして、定期テスト前のテスト週間を無くすことが実現できないだろうか。
 このところ、テスト週間中に、出張帰りで色々な場所で生徒に出くわして思うことがある。彼らにとってのテスト週間は、ゲームをし、買い物をし、楽しい時間なのである。勉強のために時間を使っていないのだ。(すべてがそうとは言い切れないが・・・。)その現状を見ても、テスト週間は実に生徒たちにとって有益な効果を生んでいないといえる。
 しかし、表面的な点だけ見てはいけないだろう。夏休みや冬休みの補習補習補習。日々の朝補習、放課後補習。家に帰れば夜は塾。土日は模試やサテライン講座。・・・今の高校生たちにはまったくゆとりがない。これでは、テスト週間が休み時間になるのもあたりまえだと思う。わざわざテスト前に休み時間を与えるくらいなら、長期休業中の補習をなくし、テスト週間を廃止したほうがどれだけ彼らのためになるか。
 テスト前の一週間の生徒の様子で、いろいろなことを考えさせられてしまう。本当に彼らにとってふさわしいテスト週間のあり方を再検討しなければならない時期に来ているのではないだろうか。

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